第30話:万獣の王! 40人の花嫁と神速の一撃
「――来い。……臆病な負け犬の遠吠えは、もう聞き飽きた」
俺の声は、夜の帳を切り裂くように草原に響き渡った。
地平線の彼方から押し寄せるのは、数万の魔狼の群れ。その中心で、一際巨大な漆黒の影が、大気を震わせる咆哮を上げた。
「グガァァァァァァッ!! 思い上がるなよ、人間風情が! 我は神話の時代より万獣を統べる者、四天王フェンリル! 貴様のその傲慢な魂ごと、噛み砕いてくれるわ!!」
フェンリルの巨体が弾丸のような速さで跳躍し、漆黒の雷光を纏って俺へと迫る。その圧倒的な質量と威圧感に、背後に控える獣人の避難民たちが悲鳴を上げ、膝をついた。
だが、俺の視界は驚くほど静止していた。
「……ユートス様、バックアップを開始します。……皆様、回路を繋いでください!」
カトレイアの凛とした声が響く。
その瞬間、俺の背後で待機していたメイド隊、護衛兵、そしてガルラをはじめとする獣人の娘たち、総勢40名の女性たちが一斉に祈るように手を組んだ。
彼女たちと俺を繋ぐ『魔力中継槽』が、オーバーヒート寸前の唸りを上げる。
『警告:契約人数40名による一斉魔力供給を確認。……全ステータスが通常の40倍を超過。……限定神格化への移行を開始します』
ドクンッ!!
心臓の拍動が世界を揺らした。
俺の全身から噴き出したのは、もはや魔力という概念を超えた「黄金の炎」。
迫り来るフェンリルの牙が俺の首筋に届く寸前、俺はただ指先一つで、その巨大な顎を跳ね除けた。
「……何ッ!? 我が全力の突進を、指一本でだと……!?」
フェンリルの紅い瞳が驚愕に染まる。
「フェンリル。お前は強いよ。……だが、俺の背後には、俺を信じて命を預けてくれた40人の想いがあるんだ。……一人で戦っているお前には、一生届かない重さだ」
俺は地面を一歩踏みしめた。それだけで、数キロメートルに及ぶ草原の地割れが発生し、周囲の魔狼たちが衝撃波だけで粉砕されていく。
「――【獣化共有】・【神速】・【剛力】――複合スキル『獅子王の審判』!!」
俺の姿が消えた。
いや、光そのものとなってフェンリルの周囲を乱舞した。
一瞬の間に、神話級の巨体を誇るフェンリルの全身に、40本の黄金の光の杭が突き立てられる。これは、契約した40人の女性たちそれぞれの「祈り」を物理的な破壊力に変換した連撃だ。
「ガ、アァァァァッ!? 身体が動かぬ……! この杭、我が魂を直接縛り付けているというのか!?」
「逃がさないわ、フェンリル! ……貴方が汚したこの大地、貴方の血で清めてもらうわよ!」
ガルラが俺の魔力を分け与えられ、銀色の光を纏って跳躍した。彼女の爪が、フェンリルの唯一の弱点である喉元を深く切り裂く。
「……トドメだ」
俺は『古竜雷』を鞘に納め、右手に全魔力を集中させた。
40人分の魔力が一点に圧縮され、その掌の中には、小さな太陽のような高密度のエネルギー体が形成されていた。
「――『万華鏡・終焉砲』」
俺が放った光の奔流は、フェンリルの巨体を真っ正面から飲み込み、その背後に展開していた数万の魔狼の軍勢ごと、夜の草原を白銀の世界へと変えた。
爆音さえ置き去りにする、静寂の破壊。
数分後、光が収まった場所に、四天王フェンリルの姿は微塵も残っていなかった。
「……終わったな」
俺が呟くと同時に、背後から歓喜の声が爆発した。
「ユートス様!! 勝ちましたわ! 私たちの力が、四天王を……!」
カトレイアが駆け寄り、俺の腕に縋り付く。メイドたちも、兵士たちも、そして救われたばかりの獣人の娘たちも、涙を流しながら俺の周りに集まってきた。
その時、倒したフェンリルの消滅した跡から、小さな、本当に小さな「光の粒」が俺の胸へと吸い込まれていった。
『四天王フェンリルを討伐。……スキル【万獣の王】を獲得しました』
『称号【ガルダルクの救世主】により、獣人国全土の女性からの好感度がMAXになります』
「……え、好感度MAX?」
俺が首を傾げた瞬間、周囲にいた数十人の獣人女性たちの視線が、一変した。
「……救世主様……。なんて、雄々しいお姿……」
「……私、もう我慢できません。……今夜、貴方の種を頂けませんか?」
これまでは感謝と憧れだった彼女たちの瞳が、どろりとした濃密な「情欲」と「独占欲」へと書き換えられていく。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! ユートス様は、私たちが先なんだから!」
リリアとアリエルが割って入るが、獣人たちの本能的なアプローチは止まらない。
「ふふ、ユートス様。……どうやら今夜の宴は、ガルダルクの伝統に従った『多種族交配祭』になりそうですわね」
カトレイアがクスクスと笑いながら、自分の襟元を緩めた。
草原に吹く風は、いつの間にか春のような温かさを帯びていた。
四天王を倒した英雄を待っていたのは、安らぎの休息ではなく、40人以上の美女たちによる、理性崩壊寸前の熱い「夜の戦い」だった。
俺の100人ハーレム国家。
その人口は、この一夜でさらに爆発的に増加することになる。




