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第29話:野生の晩餐! 束の間の休息と深まる絆

国境の門を突破し、聖域へと続く広大な草原に陣を敷いた俺たちは、夜の帳が下りるのを待ってキャンプを設営した。

といっても、普通のキャンプではない。カトレイアが用意した巨大トレーラーが展開し、周囲にはメイド隊によって豪華なテーブルと椅子が並べられ、さながら荒野に現れた幻想的なレストランのような光景が広がっていた。

「……はぁ、極楽。戦いの後のお風呂と食事は、最高ね」

リリアが、車内の大浴場から上がり、薄手のローブ一枚でくつろいでいる。

湯上がりの肌はピンク色に上気し、濡れた髪から滴る雫が、彼女の華奢な鎖骨をなぞって落ちていく。

「リリア様、お行儀が悪いですわよ。……ユートス様、本日のメインディッシュは、メティスから運んだ極上肉のステーキでございます」

カトレイアが、エプロン姿で自ら料理を運んでくる。普段の凛とした商会長の姿とのギャップに、俺の理性が少しずつ削られていくのを感じる。

食事の席には、今日救い出したばかりの獣人の娘たちも並んでいた。

彼女たちは、人間がこれほど豪華な食事を、しかも戦場のど真ん中で楽しんでいることに驚きを隠せないようだった。

「……あの、救世主様。……本当に、私たちも食べていいのですか?」

一人の兎獣人の少女が、おずおずと尋ねてくる。

「ああ。俺の仲間になったからには、ひもじい思いはさせない。……たっぷり食べて、力をつけてくれ」

俺が彼女の頭を優しく撫でると、彼女の長い耳がピンと立ち、顔が真っ赤に染まった。

「……はい! ありがとうございます、ご主人様!!」

彼女たちの「感謝」が魔力となり、サーバーを通じて俺の中に蓄積されていく。

契約人数は、今や40人に迫ろうとしていた。

食後、俺は一人、草原の風に吹かれながら夜空を見上げていた。

すると、背後からガルラが音もなく近づき、俺の腰にそのしなやかな腕を回した。

「……どうした、ガルラ。眠れないのか?」

「……貴方の匂いを嗅いでいると、落ち着くんだ。……今まで、ずっと一人で戦ってきた。一族の誇りを守るために、弱音を吐くことも許されなかった」

ガルラが俺の背中に顔をうずめる。狼の尻尾が、俺の足に絡みついてくる。

「でも、貴方の隣にいると……私はただの『メス』に戻れる。……ユートス。私をもっと、貴方の力で満たしてほしい。……契約を、もっと深いものにして……」

彼女の熱い吐息が、夜の冷気の中で白く弾ける。

獣人族の契約は、魂の同調だけではない。肉体的な繋がりを通じて、より強固な「主従」と「愛」を刻み込むものだ。

「……ガルラ、お前だけじゃない。俺が仲間にした全員を、俺は最後まで守り抜く」

俺は彼女を抱き寄せ、その唇を奪った。

草原を渡る風が、彼女の喜びの鳴き声を遠くまで運んでいく。

その時、遠くの森から、再び不気味な遠吠えが響いた。

それは、四天王フェンリルが俺たちの存在を完全に認識し、全軍をもって迎撃に来るという宣戦布告だった。

「……来たか。明日は、この草原を魔族の血で染めることになりそうだな」

俺は腕の中のガルラを強く抱きしめ、闇の向こう側に潜む巨大な影を見据えた。

40人の花嫁(予定)に守られ、支えられる俺に、もはや死角はない。

獣人国ガルダルク編、いよいよ決戦の第30話へと続く。

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