第28話:国境の門(ゲート)! 猛り狂う獣の群れ
トレーラー『ハーレム・ゴー』は、獣人国ガルダルクの南門へと辿り着いた。
そこはかつて、人間と獣人の交易の要所として栄えた美しい石造りの門だった。だが今、そこにあるのは無残に破壊された城壁と、腐臭を放つ獣の死骸、そして――。
「グルゥゥゥ……アァッ!!」
理性を失い、瞳を赤く染めた数百頭の魔狼たちが、門の周辺を徘徊していた。
フェンリルの『狂犬病の呪い』によって魔物へと変えられた、かつての獣人戦士たちの成れの果てだ。
「……ひどい。あの中には、私の幼馴染もいたはずなのに……」
ガルラが唇を噛み締め、俯く。
彼女にとって、仲間を殺すことは耐え難い苦痛だろう。
「……リリア、アリエル。出るぞ」
「ええ。情けは無用ね。……いえ、死をもって救うのが、今の彼らへの情けよ」
アリエルが静かに剣を引き抜く。その刀身には、フィオナが施した『魂の鎮魂』のルーンが刻まれていた。
俺たちはトレーラーのタラップを降り、狂える群れの前へと立ち塞がった。
俺の背後には、20名のメイド隊と兵士隊が、一糸乱れぬ陣形で控えている。
「ユートス様、戦術支援を開始いたします」
エレインが魔導書を開き、俺と仲間たち全員の感覚を共有させる。
「【能力共有:集団加速】!!」
俺の魔力が20人の女性たちへと逆流し、彼女たちの動きが人間の限界を超えた。
メイドたちは、トレイに見立てた魔導シールドで敵の攻撃を完璧に捌き、その隙を兵士たちの鋭い突刺が貫く。
「はぁぁぁっ!!」
カトレイアが後方から魔導銃を放ち、空中の魔物を撃ち落とす。
彼女たちはもはや、ただの付き人ではない。俺の魔力を動力源とする、最強の「嫁軍団」へと進化していた。
俺は群れの中央、一際巨大な魔力反応を示す個体へと跳躍した。
それは、全身の皮膚が剥がれ、筋肉が剥き出しになった異常発達した魔狼――フェンリルの直属の部下だ。
「ガ、ガアァァァッ!!」
魔狼が巨大な爪を振り下ろす。だが、20人以上の契約者を持つ今の俺にとって、その動きは止まっているのも同然だった。
俺は『古竜雷』の柄を軽く叩いた。
「――『古竜雷・震天』」
抜刀の瞬間、不可視の振動波が周囲の空間を支配した。
魔狼の爪が俺に届く前に、その巨体は細胞レベルで粉砕され、霧となって霧散していく。
「……信じられない。あんな怪物を、一撃で……」
防壁の影で隠れていた、生き残りの獣人の少女たちが顔を出す。
彼女たちは、俺の圧倒的な無双振りと、その背後に控える美しい女性たちの軍団を見て、神罰の代理人が現れたかのような衝撃を受けていた。
「助かりたいなら、俺の背後に来い。……そこで祈っていれば、傷一つ負わせない」
俺がそう告げると、生き残った十数人の女性獣人たちが、吸い寄せられるように俺の元へと駆け寄ってきた。
「救世主様……! 私たちを、お連れください! 貴方の奴隷にでも何でもなりますから!」
『新たに12名の獣人族女性と契約。……【無限召喚】のランクが上昇しました』
『スキル【万獣の言語】を獲得。……全ての獣人と意思疎通が可能になります』
契約人数が積み重なるたびに、俺の脳内には新しい知識と力が流れ込んでくる。
もはや、俺一人の力ではない。
背後に控える30人以上の女性たちの想いが、俺を「王」へと押し上げていく。
「……ガルラ、門を開けろ。この先の聖域まで、最短距離で突き進むぞ」
「……ああ、分かったわ。貴方の背中を見ていたら、迷いなんて消えちゃった。……私の全て、貴方に預けるわ、ユートス!」
ガルラが俺の腕に抱きつき、その鋭い牙で俺の耳元を甘噛みした。
野生の愛の誓い。
国境の門を突破した俺たちの前には、呪われた獣人国の深部が広がっていた。




