第25話:愛の上書き(オーバーライト)! 奪還の口づけ
「ん……ぁ……っ、あ……ぁぁぁっ!!」
リリアの体が激しく震え、目から大粒の涙が溢れ出した。
俺の膨大な魔力が、メロウの邪悪な旋律を粉砕し、彼女の魂を塗り替えていく。
どす黒い霧が彼女の口から吐き出され、リリアの瞳に本来の翡翠色の輝きが戻った。
「……ユートス、私……何を……。ごめんなさい、あなたを傷つけようとするなんて……!」
「気にするな。……次、いくぞ」
俺は間髪入れず、アリエル、エレイン、エレノア……一人一人の体を抱き寄せ、魔力を直接叩き込んでいった。
それは戦場で行われるにはあまりにも情熱的で、官能的な光景。
メロウの洗脳を打ち破るたびに、彼女たちは恍惚とした表情で俺に縋り付き、より深い契約の絆へと結びついていった。
「バ、バカな……! 私の『ルナティック・メロディ』を、ただのゴリ押しで突破するなんて……! そんなの、魔力量が無限になきゃ不可能なはずよ!」
メロウが取り乱し、尾鰭で氷を叩き割る。
「言っただろ。俺の魔力は、嫁の数だけ倍増するんだ。……100人とは言わずとも、今ここにいる最高の仲間たちの力だけで、お前の毒なんて浄化してやるよ」
全員の洗脳を解き終えた俺の背後には、以前よりも増して闘志に満ちた美女たちが並んでいた。
いや、ただの闘志ではない。自分たちを操ったメロウへの、女性特有の底知れない「怒り」が煮えくり返っている。
「……よくも、ユートス様を操って私に殺させようとしたわね。……万死に値するわ」
エレノアが杖を掲げ、黄金の魔力を収束させる。その背後には、巨大な聖天子の幻影が浮かび上がっていた。
「私の剣を汚した罪……その首で贖ってもらうわ!」
アリエルの剣が、雷光を纏って吠える。
「……フィオナ。あんたの作ったこの剣、もう一段階上の出力を試してもいいか?」
俺が振り返ると、フィオナは不敵に笑い、俺の肩を叩いた。
「あったりまえじゃない! アンタの魔力なら、この街の全魔力すら上回れるわ。……ぶちかましなさい!」
俺は『古竜雷』を正眼に構えた。
仲間たち全員との『フル・オーバーロード』。
洗脳を解いたことで、彼女たちとのパスはさらに太く、強固になっている。
「いくぞ、メロウ。……深海に帰してやる。いや、蒸発させてやるよ」
「ヒッ……や、やめなさい! 私と戦っても無駄よ! 私の背後には魔王様が……!」
「そんなもん、100回ブチ殺してから、魔王のところへも行ってやるよ」
俺は地を蹴った。
『神速』×『剛力』×『全魔力集中』。
もはや俺の姿は、光そのものとなっていた。
「――『古竜雷・極星墜天斬』!!」
一閃。
メティスの海が、真っ二つに割れた。
海水の壁が空高く舞い上がり、その中心でメロウの体は、抵抗する間もなく光の中に呑み込まれていった。
「あ、あぁぁぁぁぁぁっ……魔王、様……っ!!」
断末魔と共に、四天王メロウは消滅した。
後に残ったのは、二つに割れた海が戻る際の巨大な波音と、ようやく訪れた本当の静寂。
俺は肩で息をしながら、剣を鞘に収めた。
「……終わったな」
だが、俺がそう呟いた瞬間、倒れ込んでくる柔らかい感触。
「ユートス……もう、離さないで……」
「私を……もっと、あなたの力で満たして……」
洗脳の影響か、それとも魔力同調の余波か。
リリアやアリエルたちが、これまで以上に情熱的な目で俺を見つめている。
戦いは終わったが、俺の「腰」の危機はこれからが本番のようだった。




