第18話:戦後の祝杯! 姫君たちの秘密の夜
王都を包んでいた絶望の煙は、朝の光に溶けて消えた。
四天王ベリアルを退けた俺たちは、アステリア国王の強い意向により、王城内でも最高級の賓客用スイートルームへと案内された。
「……信じられないな。数週間前までは、満員電車に揺られてコンビニ弁当を食べてたっていうのに」
俺は、ふかふかのソファに深く体を沈め、高い天井に描かれた豪奢なフレスコ画を見上げた。
窓の外には、修復作業が始まった王都の街並みが広がっている。人々はまだ不安げだが、俺たちの勝利を知り、その瞳には希望の光が戻りつつあった。
「ユートス様、お疲れのところ失礼いたします」
ノックの音と共に現れたのは、エレインだった。
彼女はギルドの制服ではなく、城から提供されたという薄手のシルクのドレスを身に纏っている。眼鏡を外し、少しだけ緩めたポニーテールの隙間から覗く白い項が、妙に艶めかしく見えた。
「エレインか。呪いの方はもう大丈夫なのか?」
「はい。ユートス様の魔力がまだ残っているおかげで、かつてないほど体調が良いのです。……むしろ、力が漲りすぎて、少し体が火照るくらいで」
彼女は頬を朱に染め、視線を泳がせた。
「国王様からの伝言です。今夜はゆっくりと休み、戦いの疲れを癒してほしいとのこと。……そして、大浴場の準備が整いました」
「大浴場、か。それは助かるな」
案内されたのは、王族専用のプライベート・スパだった。
大理石の床に、香り高いアロマの煙。広々とした浴槽には、魔力で温度調整された清らかな湯が並々と注がれている。
俺は一人、静かに湯船に浸かり、これまでの激闘を振り返っていた。
(無限召喚、能力共有……。神様からもらったこの力で、俺は本当に世界を変えつつあるのか)
お湯の熱さが、凝り固まった筋肉をゆっくりと解きほぐしていく。
だが、その安らぎは長くは続かなかった。
「……あら、先客がいたのね」
聞き慣れた、だが今はひどく緊張を誘う声。
振り返ると、そこには湯気に包まれた四人の影があった。
リリア、アリエル、エレイン、そしてエレノア王女。
彼女たちは、薄いバスタオル一枚を体に巻きつけただけの、あまりにも無防備な姿でそこに立っていた。
「ちょっ……お前ら! ここは男湯とか女湯とかないのかよ!?」
「ユートス様、ここは王族の『貸切』風呂ですわ。ですから、私たちが一緒に入っても、何の問題もございません」
エレノアが、長い金髪をかき上げながら、優雅な仕草で湯船に足を浸した。
湯気に濡れた彼女の肌は、まるで真珠のような輝きを放っている。
「そうよ、ユートス。私たち、契約者同士でしょ? 魔力の循環を安定させるには、こうして肌を合わせるのが一番効率的なんだから」
リリアが大胆にも俺のすぐ隣に座り、濡れた肩を寄せてくる。彼女の体から漂う、森の香りと石鹸の匂いが、俺の理性を激しく揺さぶった。
「わ、私は……その、アテンド役としてだな! 決して、不純な動機ではないわ!」
アリエルが真っ赤な顔をして、タオルをぎゅっと握りしめている。だが、その視線は隠しきれず、俺の胸板をじっと見つめていた。
「皆様、落ち着いてください。ユートス様の疲労回復を最優先に。……さあ、ユートス様。背中をお流ししましょうか?」
エレインが背後に回り込み、柔らかい手つきで俺の肩に触れる。
四人の美女に囲まれ、湯気の中で交わされる甘い吐息と、水面の揺らぎ。
「真・契約」によって深まった絆は、俺の魔力だけではなく、本能をも極限まで高めていた。
「……ねえ、ユートス。今夜は、まだ終わらせないわよ?」
リリアが俺の耳元で囁き、そっと手を重ねてくる。
王都の英雄としての褒賞。それは金銀財宝だけではなく、彼女たちの真摯な、そして情熱的な「愛」という形でもたらされようとしていた。
俺の異世界生活。社畜時代には想像もできなかった、あまりにも甘美で、あまりにも過激な「休息」が始まろうとしていた。




