第15話:四天王の来襲! 王都炎上と逃亡の姫君
地下迷宮を脱出し、俺たちが目にしたのは「地獄」だった。
「……嘘でしょ? 王都が、燃えている……」
リリアが絶句し、弓を握る手が震える。
先ほどまで平穏だったはずのグラン・セルティアの空は、禍々しい紫色の雲に覆われ、あちこちから黒煙が立ち上っていた。
「おい、あれを見ろ!」
俺が指差した先――王都の中央広場に、巨大な「穴」が開いていた。そこから次々と溢れ出すのは、これまでの魔物とは一線を画す、漆黒の鎧を纏った魔族兵たち。
「アステリア王国騎士団は何をやってるのよ!?」
アリエルが剣を抜き、怒り混じりに叫ぶ。だが、彼女の問いに答えるように、一人の男が空からゆっくりと降りてきた。
背中には巨大な蝙蝠の翼。手には血に濡れた大鎌。
「ククク……脆弱だな。人間どもの誇る『聖騎士』とやらも、我が『絶望のベリアル』の前ではゴミ同然だ」
「四天王……ベリアル……!」
エレインが恐怖で顔を青くし、俺の背中に隠れる。
ベリアルが鎌を一振りすると、漆黒の衝撃波が放たれ、一軒の民家が粉々に砕け散った。その瓦礫の中から、一人の少女が這い出してくる。
ボロボロになったドレス。だが、その気品溢れる立ち振る舞いと、黄金に輝く髪は隠しようもない。
「……アステリア王国、第一王女……エレノア様!?」
アリエルが声を上げた。
「お逃げください、姫様!」
近衛騎士たちが身を挺してベリアルに挑むが、その鎌が閃くたびに、英雄と呼ばれた男たちが無残に散っていく。
「次は貴様だ、王女。その高貴な魂、我が主へ捧げよう」
ベリアルが死神のような笑みを浮かべ、エレノアへと歩み寄る。
「……ここまで、なのですか。お父様、お母様……」
エレノアが覚悟を決めたように目を閉じた、その時――。
「――人の街で勝手に暴れてんじゃねえよ。この蝙蝠野郎」
俺は【能力共有:神速】を全開にし、アリエルの剣術とスイの防御膜を纏ってベリアルの前に躍り出た。
キィィィィィィィン!!
魔剣と大鎌がぶつかり合い、凄まじい火花が散る。
「ほう? 我が一撃を受け止める人間がまだいたとは」
「ユートス、無茶よ! 四天王とまともにやり合ったら……!」
リリアの叫びが響くが、俺は不敵に笑う。
「リリア、アリエル、エレイン! 姫様を保護しろ! こいつは俺が止める!」
俺は背後のエレノアを一瞥した。彼女の碧眼が、驚きと希望に満ちて俺を見つめる。
「貴方は……?」
「名乗るほどの大層なもんじゃない。……ただの、通りすがりの召喚士だ」
俺は右手の紋章を最大出力で解放し、ベリアルを押し返した。
王都の運命、そして美しき王女の命。
全てを背負った俺の、本当の「英雄譚」が今、炎の中で幕を開けた。




