キメラの雷鳥さがし 34
あらかじめ打ち合わせて武器工房に入った私達。私はサイゾウが隠密行動の認識阻害を使ったため、気配が薄くなって居るとは思えない感じだけど。
「いらっしゃいませ、今日は剣のお手入れですか?」
気の良さそうな店主が話しかけてきた。
「風炎鳥を返してもらいに来た」
「!!」
「お前には聞きたいことがある」
ルートの合図と共に、呼び出していたラレーヌの植物を操る能力で捕縛した。しっかり猿轡までしているのがラレーヌらしいというか。
工房の受付の後ろにある扉から工房内に入ると、武器の保管庫から奥へと進んだ。廊下を挟んで、向かいにある扉を開けると、鍛冶場になっており、数人の職人が作業をしていた。
私達が入っても、何も気にしていないのか、自分たちの作業に没頭している。ルートは室内を見渡してから、廊下に戻るように言った。
「彼らは生粋の職人だろう。冒険者が入って来ても微動だにしなかった」
『この奥から気配がする』
サイゾウが羽を前方に伸ばして、風炎鳥の気配がする方を教えてくれた。
廊下は窓の有るドアの方に行けば従業員の通用口に出るようで、サイゾウが教えてくれた暗い奥のドアは、どこに通じているのか分からない。
ドアを開けると、ギィィと軋む音を立てて開いた。暗い廊下が続いて、最奥の扉は、少し重厚な作りになっている。
「ヒマリ、そっちは工房主たちの部屋だろう。本命は、入って来たドアの横にある引き戸‥‥ここだ」
ルートが指し示したところは壁の様な感じがしたけど、近くに寄ると風が流れて来る。その壁を押すようにして引くと、ガラガラと音を立てて引き戸は開かれた。
現れた地下に降りる階段には足元を照らす魔石があるのか、降りるには十分な明るさを保っていて、少し拍子抜けした様にも思えた。
「ヒマリ、ショックな場面があるかもしれない」
歩みを止めたルートがそんなことを言ってきたのは、進むにつれて温度が高くなっていたからなのか。
今までの魔獣が望まない労働を強いられていた環境を考えれば、風炎鳥が酷い扱いを受けているかもしれない懸念がある。ルートはこんな時も私の心が壊れないように気にかけてくれている。
「あったとしても、助けたい!覚悟はしてるから」
「分かった。息はマント越しにするように」
ルートがマントを整えて、熱風を凌げるようにしてくれた。肩を見るとサイゾウが風の守護で熱風が当たらないようにしている。
先を進みながら安全を確認していくルートについて行く。
キィィィィ――――!
悲鳴のような鳴き声のような、何とも言えない悲しみが伝わって来る声が聞こえて、身体が竦んでしまった。
「俺が見て来る」
「‥‥」
上手く返事を返せなかった私の頭にポンと手を乗せて、ルートは静かに抱きしめてくれた。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




