キメラの雷鳥さがし 29
「Follow the suspect's trail.(容疑者の足取りを追跡)」
ルートの居る場所へ行くと、ファルが追跡の魔法を発動させた。足元に出現した魔法陣が光っていく。
徐々に魔法陣ごと浮き上がって、私達の前方にモンキーチキンの足跡が浮き上がって走り出した。すると、その後を追う様に私たちを乗せた魔法陣が追っていく。
初めての感覚だったけど、客観的に見たら空飛ぶ絨毯ぽく見えるのではないかと想像してしまった。
「驚いた?」
「少しね。でもファルがちゃんとした言葉の呪文を使ったの、初めて聞いたかもしれない」
そう答えたら、状況に寄るらしい。通常は、追跡者が目の前にや近くに居て目視できる状態からの追跡魔法だったら、”追跡”で十分で、今回は犯人やそれに近しい者の足跡を追跡するから”容疑者の足取りを追え”という文章になったと教えてくれた。
意外にも、この世界の魔法は直接的な表現なのだと、妙に納得してしまった。
そんな事を考えている内に、景色は北の農園から南の方へと進み、街に入る手前で西に曲がった。
左に街並みを見ながら2ブロックほど進むと、速度がゆっくりとしたものに変わった。
ピタリと止まった足跡は、西の工業地区の手前にある街の建物の方を向いている。
「穀物庫か」
「確か、ここは西の穀物庫だったよね。東側に東と北の穀物庫が並んでる筈だからさ」
モンキーチキンの足跡はまだ穀物庫の方を向いている。しばらくして、やっと向きを変えて、工業地区の方へ進んで行くと街を囲む城壁の傍にある建物に入っていった。
「ここは何の建物かしら?」
「粉ひき小屋だな。ここならモンキーチキンが居ようと、仕事をさせていた事にできるし、実際させてるだろうな」
「ずっと働きっぱなしなんて可哀想ね」
「‥‥他人のことは自覚できるんだね、ヒマリは」
可哀想なものを見るような視線を向けてこられたので、微妙な気持ちになってしまう。確かに、自分は働き過ぎだった。でも、研究に明け暮れる状態だったから仕方が無い気もする。
「あ、これ自分はしょうがないって顔だね。ルート、やっぱ、本気で何もしない日でも作ったら?」
「ファル、今は私じゃなくてモンキーチキンのことじゃないの?」
論点をずらさないで欲しい。けど、ファルが
「検索‥‥モンキーチキンが5匹いる。しかも見張りが居ない」
「ヒマリ、ホミバードを呼べるか?モンキーチキンと話がしたい」
「サイゾウかサスケ、出てこれる?」
『いるよ』
この軽い返事、サスケだ。
ルートは早速、サスケに姿を現したまま、私の肩に乗るように言って、小屋の中に入っていった。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




