キメラの雷鳥さがし 19
ジェスファーノさんの案内はとても細かくしてくれるので、地域の歴史とかが垣間見えて面白い。ずっと歩きなのも気にならないくらいだ。
遠くを見渡した時、ずっと続く大通りの西側方面に気になる色の建物が見えた。
「ジェスファーノさん、あの薄黄緑と緑の建物は何でしょうか?」
「ああ、あれは教会の施設ですね。薄黄緑は親を亡くした子供たちが住んでいる場所です。そして、その隣の緑の建物が一人で生活できない老人が住んでいる建物です」
それは凄い施設の並べ方だと思った。自分の世界でも老人ホームと幼稚園や保育園を一緒に並べてお互いに利点を一致させた施設の作り方がある。
子供の情操教育には年配者がいる施設に通うのだって良い事だし、そう言った施設にいる年配者には、気晴らしにもなるし、活力にもなる。お互いに良いのよね。
「確かに、こういった地区の作り方は他に無いな」
「グランラード特有の地域作りなのです」
共存関係の出来る施設同士を隣り合わせるのがこの国の政策なのだとしたら、教皇様はとても凄い感覚を持っている優しい方なのかもしれない。
「あの建物‥‥ギルドですか?」
「ええ、大通りに面して分かりやすい立地にあります」
この辺は冒険者ギルドと、ギルド寄りの物を扱う道具屋、武器屋、防具屋が裏手の道に並んでいる。宿屋が東西と北にあるけど、東側の宿が一番長閑な感じに思えた。
他にメインの大通りは洋服や飲食店や雑貨店があり、銀座とかの街並みに似ている感じがした。
メイン通り以外の道には、野菜や肉、魚を売る店が並んでいる。そこまで見て回って、生活感のある部分はメイン通りから見えない部分にある作りなのだと理解して違和感が消えた。
「もしかして、グランラードの街の作りって似ているのですか?」
「どうでしょうか‥‥まあ、地区分けされて機能性を持たせながら、まあ、ある程度は似てますね。なんせ白い壁に白い道ですから迷わないような作りになってますね」
確かにこの白い壁と地面は分かりにくい。建物が同じに見えてくるし、何処を歩いているのか分からなくなる。
「ああ、でも首都トルノーエスは分かりやすくしています。道のタイルが全て教会が正面になるように描かれていますし、道も放射線状になってますから」
成程。今度はパリの街並みを浮かべながら、ジェスファーノさんの説明を聞いていた。
「此処が西地区の最後の場所です。しかし、騎士でも無いのにこのスクエノの街を歩き回れるとは凄いですね。我々の見回りでも2時間はかかる距離の移動ですよ?」
南に位置する城壁のある検問所の建物は、東西に長い。その長い建物自体が堅牢な石造りで城塞となっているような聖騎士の宿舎や飲食、武器、防具、道具、居酒屋などが全て揃っている建物らしい。
それ以外は、街の住民が住んでいたり、少し離れた所に農地があるだけなので、今歩いた街並みの全長は14km程度。3時間に満たない時間で回れる距離なので疲れはしなかった。
けれど、その間にずっと鑑定をしていたので、身体より脳が疲れてしまった。
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