キメラの雷鳥さがし 14
正直、ジェスファーノさんから教皇様の力を聞くまで、夜逃げしようかと考えていた私は一気に心が楽になった。それほど、切羽詰まった状態だったからだ。
「それとヒマリ殿。申し訳ないが、教皇様に聖水を使うまでの経緯を報告させてもらった」
「えっ‥‥教皇様に?」
「身体を労わるようにと、シルフの加護を使って新しい聖水を贈って下さった」
「ありがとうござ‥‥い‥‥ます」
ポロポロとこぼれる涙。会った事も無い人から受ける優しさに、心が自然と反応した涙だった。それをくみ取ったジェスファーノさんが聖水を傍のテーブルの上に置いて部屋を出て行った。
「サスケ?」
『オレの情報で酷い目に遭わせた‥‥』
項垂れるサスケは、足元の方にちょこんと居て、とても悲しそうだ。
「サスケ、これは私の問題なの。だから、気にしないでね」
『あの時、ヒマリ様が息が出来なくなって、苦しそうにしていたのに自分はなにも出来なかった。ジェスファーノ殿が教会に聖水を取に行ってくれなかったら‥‥ルート殿がヒマリ様に聖水を飲ませてくれなかったら‥‥』
サスケが泣きながら、助かって良かったと何度も言っているけど、私の思考は停止していた。
「サスケ、ルートが聖水を飲ませてくれたって‥‥」
『ん?親鳥のように、口移しで飲ませたけど?』
「口‥‥移し?」
ノォォォォ!!
何てこと?!
気が付くまで3回くらい飲ませてたとサスケに聞いて、顔から火が噴き出そうになくらい熱く真っ赤になった。
嫌だったのかと問われて、嫌じゃないけど、恥ずかしくてどんな顔をして会えば良いか分からないと、早口で応えてしまった。
『むふっ、ヒマリ様、人命救助に意識しちゃって‥‥』
すみません。ちょーっと、この子こういう性格?
さっきまで泣いていたサスケ、さっきのは演技だったの?
「サスケ、チャチャに言いつけちゃうわよ?」
『!!‥‥いや~助かって良かった!』
はい、確定。このお調子者は、お嫁さんのチャチャに協力してもらおう。
「サスケ、普通の情報って言ってた、首都のトルノーエスへ向かった者はどんな感じの人だったの?」
『異世界人だよ。でもね、ジフ・コーンラノっていう苗字持ちの商人と同行していて、奴隷紋の首輪はしてなかったけど、お洒落な腕輪をしてたんだでね』
「なんで異世界人だってわかったの?」
『トネリアツロウって名前の発音が変わっていたし、オーラが違うんだよね異世界人って』
サスケの目からは、オーラがどのように見えているかは分からなかったけど、トネリ・アツロウという名前の事もあって、日本人が護衛ではなく商人に同行するのも不思議な気がする。
「サスケ、ジフ・コーンラノという商人とトネリ・アツロウの事を調べてくれる?」
『了解。けど、あの商人はトランジェットと良く交易してるみたいだったよ』
「危ない事はしないでね」
部屋から羽ばたいていくサスケを見送って、もう一度頭の中を整理してみることにした。
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