二人の考える休みかた
ルートさんと話していたファルさんは、私に採取セットを見せてくれた。
「うわっ‥‥綺麗な瓶のセットですね」
「採取セットとも言うね。欲しいかい?」
目の前に置かれた採取セットに手を伸ばそうとしたら、ルートさんに取られてしまった。
「これはファルからのご褒美だそうだ。明日、明後日の2日間、しっかり身体を休ませることが出来たらプレゼントしてくれるらしいぞ」
「え?!ファルさん、良いのですか?」
驚いて聞いたら、ニッコリ頷いている。
休むだけで貰えちゃうの?貰っちゃって良いの?なんて考えていたら、二人がクスクス笑っている。
「もしかして、冗談?」
「いや、本当だよ。出来たらご褒美ね」
「当然、スキルは使うなよ?黙っていたら、暇つぶしとか言って調べまくるだろうからな」
図星というか、何でこんなに私の事を私以上に分かるのかなルートさんは。そして、まだ会って間もないファルさんにまで、私の性格を見抜かれている気がする。
「スキルは使わないし、いくら私が社畜でも休むのが目的なんて簡単だと思うけど」
「確かに大抵の人間だったら、簡単だろうよ」
「じゃ、2日間ちゃんと休んだらまたおいで」
ファルさんはそのまま奥の部屋に入ってしまった。そして、ルートさんも買い物は2日過ごしてからだと言って、お店を出てしまっている。
「大通りのこの道では、朝は朝市をやっている。それと、明後日まで宿屋に泊まるからな」
「え?はい」
「俺の家でも良いんだが、ヒマリの興味を掻き立てる物ばかりありそうなんで‥‥却下だ」
微妙にルートさんの家というのも、私の興味を引くものも、どちらも気になって仕方がない。けれど、二人にこんなにも社畜認定されているのが腑に落ちない。
「休んでやるわ!」
「‥‥ま、2日間は日用品やら、街の散策をしていれば直ぐに過ぎる日数だからな」
「え?散策は良いの?」
適度にと言われて、彼らの休ませたいという基準が分からなくなった。休む=何もするな‥‥ではないということ。
私は、衣食住について考えた。
「ルートさん、支払いは、わた‥‥」
「支払いはギルド、もしくは、国か、俺持ち。で、ヒマリの件は一任されているから俺持ち」
「ええっ?!面倒までみて、お金まで出してたら何の得が?」
S級冒険者は一回の依頼料が凄いので、私一人の食い扶持を負担したところで痛くも痒くもないと言われてしまった。
大通りの露店で髪留めやリボンまで揃えてくれたけど、このままトールさんに出費させるのは忍びない。何か返せる事は無いかと考え始めた。
「忘れるなよ?ヒマリは休みに来たんだ。お礼に何か‥‥なんて考えてたら、ファルから採取セットを貰い損ねるぞ」
「う‥‥」
あまりにもピンポイントでツッコミが入ったので、2日間だけお礼の事もお金の事も考えないようにした。
でも、この時は本当に二人が言っている休みについて、軽く考えていたのよ。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。