キメラの雷鳥さがし 6
翌朝、ラレーヌが慌ただしく入って来た。
『ヒマリ、ルート居る?』
「ラレーヌ、おはよう。先に食堂に行ってると思うけど?」
『大切な話があるから、ヒマリも来て? ふふ‥‥やっぱり、その恰好似合ってるわ』
ラレーヌに促され、私はいつでも出発できるように、収納カバンを肩から下げて食堂に向かった。
今着ている綺麗な銀糸の縁取りローブも、妖精のようなフリフリレースの洋服もファルが出した数多くの服の中から、ルートが選んだものだった。
明確なイメージがあるんだねと、ファルは涙を拭きながら頷いていたけど、正直、戦闘系だと思っていたルートのハイセンスさに、驚いてもいる。
自分は黒ばかりなのに、良く見れば服のデザインや指し色の銀など、細部にこだわっているようにも見える。
目を引く洗練された美しさを、黒で引き締めている感じだ。
ラレーヌが似合っていると言ってくれて、喜んでいる自分がいる。今の自分はルートと並んでいたら、同じパーティメンバーに見える衣装だから。
至らない自分のやりたい事を、ずっと優先して叶えようとしてくれるルート。そんな彼の優しさに甘えているのに、義務感からなのかと不安に思ってしまう‥‥
「何考えちゃってるの私?!」
ルートは誠実に私の護衛をしてくれているのに、意識するなんてダメでしょ。
いやいや、その考えこそ違うし!
はぁ、せめて昨日の夜、ベットで寝ていた私にルートがおやすみのキスをしなければ、こんなに意識しなかったのよ。
まぁ、頬にだったけど。昨日は作戦とか聞いていて寝つきが悪かったのもあったし、ようやく眠気が出てウトウトしてきた矢先の出来事に、心臓がドキドキして寝たのが明け方。
学生以来の恋愛脳に自分でもアタフタしているし、これからどうやって接したら良いか考え込んでしまう。
あれこれ考えていたら食堂に着いてしまった‥‥。
「おはよう、ヒマリ!」
「おはよう、ファル‥‥どうしたの?」
問いかける私の肩に、長老配下のサイゾウが窓に舞い降りた。
『ルート殿、ヒマリ様をお連れになるなら、必ず守ると約束して欲しい。コタロウやノウヒメからも頼まれている。我等総意の案件なのだ』
「ああ。ヒマリは絶対に守る。そのための書簡だからな」
サイゾウとルートの口調から真剣さが伝わってくる。
有難いけど‥‥って書簡?
書簡は、何処からの物なのか聞いてみたらビックリ!
「ハッシュフル王国のファレンシア王女殿下だ」
「まさか、ここ数日忙しそうにしてたのって、王女殿下に依頼書をお願いしてたわけ?ちゃっかり宰相印まで押されてる書簡って‥‥」
「その方が合法的にグランラードで捜索活動ができる」
ファルが広げた書簡には王女と宰相の捺印が押されている。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




