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社畜はスローライフの仕方がわからない  作者: 真白 歩宙


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それぞれの言い分は 2

『‥‥王よ、このような小娘の妄言を鵜呑みにしていては!』


ピシャッ、ドカ―――ン!


『王の雷?!』

「話しの通じない方には、王直伝の落雷にでも当たってもらえば、理解力が増すかと思ったけど無理みたいね。トゥルエノ、臣下の礼を尽くさない無礼者は、焼き鳥にしても構わないわよね?」

『‥‥かなり怒っているようだな、ヒマリよ』

「当たり前でしょ!王子は常に貴族に隔てなく礼をとっていた。その王子を軽視する振舞や、嘘をついて自分に都合の良いようにする無礼千万な輩は臣下とは言わないし、王子を通して王であるトゥルエノを馬鹿にしているのよ?これが許せる?」


 私の言葉の意味を汲み取って、トゥルエノは肩を揺らしながら笑い出した。笑いながら頷いて見事だと褒めてくる。

 組織において、小さな歪は大きな組織の腐敗に繋がる。冬場に買ったミカン箱の1つに青カビが生えているのに放置していると、その周辺のミカンもカビが生えて腐っていく。

 古典的に言えば、韓非子にもある、蟻の穴から堤も崩れると。


「聡明な王子は、自分が選んだ相手を見分けられます。私の鑑定が無くても分かるという事がご理解頂けましたね」

『ヒマリ、ありがとう』

『婚約者の鑑定結果を表示してもらえるか』


――――――――――――――――――――――――――――

雷鳥の卵

個体:雷鳥の卵の欠片

種族:キメラの雷鳥(王子が選んだ卵)

属性:雷・炎・水

相乗効果:

仲間になると属性を付与できる個体もいる

悩み事:

孵化している最中に襲われた

――――――――――――――――――――――――――――


 王子が深々と頭を下げる後ろで、トゥルエノが婚約者の鑑定結果を表示してくれと言うので、私はもう一回壁に触れた。

 その情報に騒めく貴族達。


『見ての通り、キメラの雷鳥が王子の相手だ、そしてその娘は孵化中にさらわれたのだ』

『なんという事だ‥‥』


 雷花の花園に現れたワイバーンの話や猿族の話が飛び交い、騒めいている。それを、黙って見つめるトゥルエノと目が合った。

 まさか‥‥この大勢を鑑定しろと?

 ニヤリとニヒルに笑うトゥルエノは、王様なんだなと実感した。だって、こんなブラックな頼みごとを視線一つでお願いしてくるなんて王者の物言いだからだ。

 鑑定を発動させて、健康診断の如く1枚1枚ファイルに納めるようにデータを取っていく。ファルが回復薬を途中で飲ませてくれたけど、船酔いより酷い頭の疲労感が半端ない。


『先ほどは、すみませんでした。反省しております』

『私も、これからは臣下として王子に接します』


 公爵家の2人の令嬢が謝ってきた。後ろに控えた公爵たちも、頭を下げている。そんな姿を見て良かったと思った。

 そんな彼らの横から、落ち着いた優しい感じの雷鳥が深く頭を下げている。その横にいる夫人も優しい感じの鳥っぽい。


 脳が疲労困憊だったけど、その日、何百という鑑定を一気に行った結果、私の鑑定は一度に10人ずつ鑑定できるようになった。

読んで下さって、ありがとうございます。

毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。



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