加護と祝福と名付け 2
「じゃあ、どうして他のご令嬢は自分が婚約者だと王子に詰め寄るの?」
『王子がまだ未熟だからだ』
「何それ‥‥未熟って孵って間もないでしょ?未熟なの当たり前じゃない?」
「まぁ、それなりにさ、王族って貴族からしたら隙あらばって感じじゃない、何処でもあることだから」
呆れた‥‥そのための王政じゃないの?
当たり前の様に言うトゥルエノも、ファルも、今の起こっている現状を仕方ないような言い方で終わらせている。ファルに関しては、いろいろな国を知ってそうだから、そう言うのは仕方ない。
「トゥルエノ、どうしてあなたが父王として守らないの?」
『王族はそれぐらいの対応が出来ねばならない』
「なら聞くけど、生まれて間もない雛鳥に敵が来たから飛んで逃げろなんて言うの?」
私の問いにトゥルエノは、その時は身を挺して守るし戦うと言い切った。
「今が正にその時じゃない!同じことよ。貴族との接し方も分からない状態で嘘をつかれる。このまま人間不信‥‥鳥不信になったらどうするの?」
「ヒマリ、あまり介入してもさ‥‥」
「もう介入されてるでしょう、あの貴族は私達の前で嘘を言ったのだから!トゥルエノ、さっきの人たちを呼んでもらえる?」
「‥‥ヒマリさん?ちょっと、怒って‥‥」
「王子、私が教えてあげるわ、そういう輩の対処法を!」
ああ、今日は感情的になってばかりだと、頭の奥でそう思った。何でそんなに怒るのか自分でも良く分からない。けれど、この問題を放置して卵を探しに行ったら、いけない気がした。
「余計な事かもしれないけど‥‥トゥルエノ、もし私達がグランラードであなたの力を借りる事があったとして、貴方の不在中に国で混乱が起こっても嫌なの。王子を軽視する貴族をこのままにして王不在の時が数日続いたら、何か間違いが起こるかもしれない」
自分は王子に何かが起こっても嫌だし、力を貸してくれたトゥルエノの国に混乱が起こるのも嫌だと伝えた。多分、助けられたキメラの雷鳥だって悲しむと思うから。
「憂いは絶ってから行きたいらしいぞ」
『憂いか‥‥ならば、異世界流を見せてもらおう』
「私、容赦しないから、不味いと思ったら止めてよ」
トゥルルルル―――!
囀りとは言い難い空気の震撼が響き渡った。それが、雷鳥王トゥルエノの招集の合図だと気が付いたのは、1羽、2羽と集まって来た雷鳥たちが、綺麗に並んで行くのを目の当たりにしたからだった。
「トゥルエノ、さっきより多くない?」
『全てに招集をかけた。ここには全ての雷鳥が集まっている』
さっきは、50羽くらいだったのが、10倍くらい集まっている様に見える。
「ざっと、921羽か」
「ルート、本当?」
ごく一部の心無い者のせいで連帯責任のように集められた雷鳥の皆様、ごめんなさい。たぶん、これからもっとお見苦しい一幕を見せると思う。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




