帰ったラレーヌとハンゾウ長老
昼過ぎから結婚式を見ていた私達は、途中から精霊招致の地を守るタイタンの眷族の戦いを見る羽目になった。2時間ほど、ゾフランとの攻防を見て気分がゲンナリしてきた頃、ザラファノさんが帰って来た。
「‥‥それで、今までずっと見ていたと?」
「だって、タイタンの眷族が気になるし、いつか終わるだろうって思って」
少し呆れたようにザラファノさんは画面を見ながら、小さく溜息を吐いた。
「タイタンとは考えましたね。自分たちが攻撃を止めなければ国の領地が消える羽目になると、早く気付けば終わるでしょうが」
「ザラファノさん、領地が消えるって‥‥?」
「タイタンによって1国が滅ぼされたのは有名な話です。ゾフランは大きな領土を持っていますが、ハッシュフル王国と地続きの貿易路は二度と使えないでしょうね」
攻撃をしなければ攻撃をしかけて来ないのなら、商隊が通るのは見逃してくれるのではと思っていたら、皆が甘い考えだと言ってきた。
「ハッシュフル王国のトレントの森の中での闘いなら良かったんだけどねぇ‥‥」
「ファル殿、それは無理な話ですよ。タイタンが岩石砲で広がった以上は、そこはタイタンがもぎ取った戦利品でタイタンの地となるのですから、今後、如何なる者も通ることは出来ないですし」
「有る意味、凄い精霊ね。どうすることも出来ないじゃない?」
「いや、手ならあるぞ」
ゾフランの絶望的な負け戦と今後の人間の生活路が閉ざされてしまった事が、凄く空しく思った。出稼ぎや商人の人だっていただろうに。
「何の手が?っていうか、回避できるの?!」
「タイタンはフルーツ飴が大好物だからな、それを持って行ってゾフランとハッシュフル王国を通るまでの案内を頼めば良い」
「付け加えるなら、ゾフラン側からハッシュフル王国に行くときは、全ての武装を解いて敵意を無くす必要があると思うよ。しかも、お頼み料のフルーツの飴は倍渡す必要があるけどね」
「タイタンに案内‥‥凄い抜け道ね」
皆が言うには、精霊は悪意や敵意に敏感で、侵略や詐欺まがいの目的だと捻り潰されるらしい。但し、弱い平民に関しては、善良な心さえあれば飴玉1つでも通してもらえるという。
「タイタンが愛される理由の1つだよ」
ゾフラン以外の精霊信仰の国は子供も知っていることだという。
「こんなに精霊が身近だったなんて‥‥」
『ヒマリの方が、この世界の住人より、多く知り合って身近だと思うわよ?』
『そうですぞ!少し留守にしてしまいましたが、もうお忘れか?』
「ラレーヌ?!ハンゾウ長老!!」
後ろから懐かしい声を聞いて、反射的に二人に飛びついた。
「良かった、会えた‥‥」
『たった数日間だけど、やっぱりヒマリの傍が一番ね』
『そうですな。漂ってくる充実感、安心感がヒマリ殿が一番じゃな』
「お帰り‥‥お帰り、会いたかった!」
温もりは人と変わらない。優しさや想い合う心も、人と精霊の違いなんてある訳もなく、お互いに心から待ち望んだことだ事への喜び。
見ている画面がタイタンとゾフランの攻防から一変して、夜の舞踏会に切り替わっている。純白のウェディングドレスから、黄色地に白のレースが映える舞踏会のドレスを着た王女がブロファル宰相と最初のダンスをしている。
「やっと終わったって感じだな」
『注文が多すぎて、皆大変でしたぞ!』
苦笑いするルートに、ラレーヌとハンゾウ長老。この後、長老の苦労話が始まるとは思わなかった。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




