精霊の祝福 1
結婚式の幸せいっぱいな雰囲気から、厳粛な雰囲気に変わって結婚証明書への記入を新郎新婦が行い、その証明が正式なものとして司祭が魔法で書類に刻印するらしい。
ゴーン、ゴーン、ゴーン
国中に響き渡る祝福の鐘の音。大聖堂の2人の頭上から白いフワフワした花びらが降り始めた。
大聖堂の聖堂を支える何本もの柱の間に、その半分ほどの高さで精霊が座る台座が、貴賓たちを取り囲むように設置されているのだとルートが説明してくれた。
「素敵‥‥あれ?今光った?」
「これから、祝福をくれる精霊が現れる」
「この精霊が現れる数と与えられる力で国の権威が変わってくるんだよ」
光と共に、台座に現れていく精霊の姿。その度に周囲から歓声が上がった。
「雷鳥様が来ている!この間の事は許して下さったのね!」
「いや、それとこれとは対照が違う。今回は様子見で、王族の出方で対応するだけだろう」
「精霊は平等に見るからね。ルートの言う通りなんだよ。ほら、次来たのはウンディーネとタイタンが来たみたいだね」
美しい水飛沫と泡のドレスに真珠を散りばめた髪を靡かせて台座に降り立つ精霊、ウンディーネ。その隣の台座に岩でできた巨体のタイタンが颯爽と降り立った。
精霊が降り立つ毎に、新郎新婦が頭を下げて礼を尽くすと大聖堂に歓声が上がった。
「4大精霊で来てるのはウンディーネとシルフだけだね。今回は龍族や他の種族は見合わせてるんだろうけど、少なめに感じるのは仕方ないかも」
「少なくても、交渉したい精霊が来ているのだから体面は保たれるだろう」
ファルが言うには、精霊と仲が良いドラゴンなども来る時があるらしいけど、ルートの言葉の方が気になって彼を見つめてしまった。
「俺の言ったことが気になるのか?」
「もしかして、加護を受けたい交渉相手を知っているの?」
「ハッシュフル王国を狙っているのは、北の隣国ゾフランだ。その国と地続きの地はドリアードの居たトレントの森だった、そこに次の精霊を招致するなら、軍事国家から国境を侵略されない強固な精霊が良いと考えている筈だ」
台座に降り立った精霊の中で、ハッシュフル王国が加護を受けたい精霊は‥‥
「精霊、タイタン?」
「なぜそう思った?」
ニヤリと笑ったルートが、質問を質問で返してきた。
「たぶん、精霊が争いを好まないのは周知の事実だから、屈強な岩の精霊、タイタンに国境をお願いすればルートの言っていた、国境を侵略されない強固な状態になるのかなと」
「タイタンは当たりだが、まだ足りない」
「ルートはヒマリに教育してるみたいだね。でも、ヒマリは精霊がどれだけいるのか分かって無いんだがからさ」
「これから始まる契約を見ていれば分かる」
画面を見ると、姿が見えないけれど、台座に座られている精霊の気配が分かった。ルートの言う様にこれから大きな儀式が始まるのだと、そういった雰囲気が伝わって来た。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




