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護衛はSランク冒険者でオカンだった

異世界の装備品は、現代といろいろ違うようです。

 ミセル受付嬢の呼び出しに、長身の若い男性が受付にやって来た。シックな黒を基調とした服にシルバーの長剣を装備し、長い銀髪を一纏めにした蒼い瞳の麗しい男性だった。

 格好は冒険者なのに顔と体系はスーパーモデルのような洗練された美しさを持っているなんて、天は二物も三物も与えるを地で行っている。


「ミセル、今回は俺が護衛のようだな。俺はルートという」

「日本から来た、ヒマリと申します。よろしくお願いします、ルートさん」

「ルートさん、ヒマリさんは『休み』が課題ですから、いろいろとこの世界の事を教えてあげてください」


 目を細めて感心するルートさんは、私の格好を見て頷いた。


「そうだな、先ずは()()()()()()()()が必要だな。」


 ジャケットとパンツのスーツっぽく見えるような格好を見て、これじゃダメだと言わんばかりに首を横に振っている。

 確かに、どんな服装で行くか迷ったけれど、出かけるのにいつもの通勤に選んで行くような雰囲気の物を手に取ってしまったのだ。


こっち(異世界)に行くと聞いて、その恰好を選ぶようじゃ『しゃちく』って言われているヤツだな。」

「しゃ‥‥ちく?!」


 うわっ!その言葉まで浸透していたなんて!!そう考えたら顔が引き攣ってしまった。


「すまない、悪気は無いんだ。ただな、その恰好で草原を闊歩(かっぽ)したり、魔物と遭遇(そうぐう)した時に逃げ易い恰好かどうか想像してみてくれ」

「‥‥確かに、靴も着ている物も、微妙に動きにくいです。って、魔物に追われるの決定事項?!」

「なら、先ずは服装からガサ入れするぞ。」


 テコ入れじゃなくて?刑事みたいだなと思っていたら、私の前に担当した方が捜査一課の刑事さんだったとミセルさんが教えてくれた。

 今までのお礼を述べて、私達はギルドを後にした。

 どうやら、良くも悪くも個人レベルで干渉しあうのかもしれない。



「服は装備屋でローブ辺りを見繕えば良さそうだな。靴もあるだろうから。」

「前に受け持っていらした刑事さんは、攻撃系では無かったのですか?」


 プライバシーに触れるかな?とは思ったけれど、何となく不思議に感じたのだ。刑事さんと言えば、柔道や剣道を嗜んだり、自分を鍛えているイメージがあったから。

 そんな私のイメージを吹っ飛ばす答えが返って来た。


「ああ、彼は『料理』がスキルだったんだ。趣味がスキルとして出てて、希望が『ドラゴンの料理が作りたい』だったから俺が選ばれた。ドラゴン討伐はA級以上のランクが必要だからな」

「日本にはドラゴンなんて居ないのに、その刑事さん、希望からしておかしいですよね?」

「そうか?居ないから、食べてみたかったんじゃないか?実際美味かったし」


 そんなものなのだろうか?

 ルートさんは美味しかったと言っているので、きっと、一緒に食べたのだろう。


「異世界での生活、私に出来るのか心配だわ」

「ははっ、だから俺が居る。ほら、此処が装備屋だ」


 ドアを開けて中へ入っていくと、鎧やマント、鎖帷子(くさりかたびら)、ローブ、カバン等、多くの装備品が陳列(ちんれつ)されている。革製品や金属製品が多いのか、独特な(なめ)した革の匂いがする。


「この辺りはどうだ?アンダーに着るには柔らかい素材の方が、動きやすいし過ごしやすい」

「おや、ルートさん案内ですか?お安くしておきますね。そちらは、アダマンカイコのシールクですよ。火・雷の攻撃を無効化してくれます。」

「これに合わせて、快適に過ごせて防御特化の基準で選んでくれ。」


 小柄な女性がルートさんと話している。

 普通のブラウスに見える商品が、火や雷の攻撃を無効化する説明に、どうしても確かめたくなってしまう研究員としての好奇心。


「あはは、貴女、面白いですねぇ。火、試してみます?」

「え?!」


 店員さんの指から炎が出て、ブラウスを炙っているけど、ブラウスはその白さと光沢を維持して燃えていない。


「凄い!!ブラウスが燃えてないのもだけど、指から炎が出てる!」

「ルルン、鑑定の仕方を教えてやってくれ。でないと、ここにある商品全部の効能を試す羽目になるぞ」

「あ~異界からやって来たんですもんね。やっちゃうだろうなぁ‥‥じゃぁ、鑑定魔法‥‥」


 そっか、私達から見ればここは異世界だけど、彼らから見たら私は異世界人なのだ。

 当たり前と言えば当たり前。


「鑑定魔法、私にも出来るのですか?」

「目に意識を集中させて、君らのコレのボタンを押す感じで物を見てみて」


 ルルンさんが出したのは、カメラだった。そのカメラのシャッターを切るような感覚で物を見ろと言っている。なぜ、そんなものを持っているかとか、そんなことは想像できるから無視した。

 今は言われた事を、やってみたい気持ちが勝っている。


「集中して‥‥ああ、ピントを合わせる感覚かな?それで、シャッターを切るように()る?」


 カチリと何かが符合(ふごう)する感覚があり、ブラウスについての表示が出た。


―――――――――――――――――――

アンダーに着る可愛いブラウス


素材:アダマンカイコのシールク

属性効果:火・雷の攻撃無効

相乗効果:

他の属性の水・木・土・氷と

組み合わせる事で状態異常無効化

―――――――――――――――――――


「何これ?!」

「成功したらしいな」

「ルートさん、この相乗効果って他の物と組み合わせると良いんですか?」

「相乗効果?そんなのが見えているんです?」


 書いてある事を読み上げてくれと言われ、私はそのまま読み上げた。


「他の属性の水・木・土・氷と組み合わせる事で状態異常無効化と、相乗効果の欄に書かれています」

「ルートさん、凄いですよ!ヒマリさんは鑑定眼の中でも完全鑑定眼の持ち主ですよ!もしかしたら、この上の完璧(かんぺき)鑑定眼まで到達するかも知れません!」

「ん―――まぁ、ヒマリは永住希望者ではないから、要らない要素ではあるな。今は自分の着る装備を状態異常無効化にできれば良いんじゃないか?」


 鼻息荒く自分に詰め寄ったルルンさんを軽くあしらい、ルートさんは私に目配せして他の物も選べと促している。

 ブラウスを手に取って、スカートの区画に行く。


「何処に行くか分からないのに、スカートなんてヒラヒラした物を選ぶな。素足を見せるのは止めておけ」

「‥‥‥‥ズボンを選べと?」


 そう言ったら、厚手のレギンスやトレンカに似た物を持ってきている。


「スカートの下にこれを穿()け。」


 ルートさんはオカンですか?!

 そう言いたいのを堪えて、ローブやズボンを手に取っていると‥‥いきなり2つの表示が現れた。


―――――――――――――――――――

伸縮自在なスキニー風ズボン


素材:ドク水トカゲの革を鞣したズボン

属性効果:毒・水の攻撃無効

相乗効果:

他の属性の火・雷・土 と

組み合わせる事で状態異常無効化

―――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――

気配を消せるローブ


素材:皇帝スパイダーの雲糸(くもいと)

属性効果:雷・木・土・氷 を無効化

相乗効果:

雲の糸には属性付与できる

麻痺(まひ)・毒・錯乱(さくらん) の無効化の付与

装飾品との相性が良い

―――――――――――――――――――


「‥‥この3点と靴ですねぇ。へぇ、相性良さそうです。あ、下着はおまけで付けておきます。」

「それと、靴はこれだ。後は、この腰に付けるアイテムボックスと指輪だな。」

「指輪?冒険なら指輪なんて要らないのでは?」


 途端に吹きだす二人。ルルンさんが指輪は魔道具なのだと教えてくれた。生活魔法が使えるように、水・火・風の魔法属性が付与されているのだそう。

 そして驚いたのが、靴だった!

 この世界の靴は、サイズ感が無い。どんな靴も足を入れて履いた時に、広がって足にフィットするようになっている。売られている時は掌サイズなのに、履くと自分の足にフィットする優れものだ。


「後は、隣のルッツの所で武器の調達だな」

「ポーションとか回復系の物を持つのをお忘れなく、ルートさん」

「ああ、俺に付けておいてくれ」


 そう言って、ルートさんは私が着替えている間に、支払いを終わらせてしまった。

読んで下さって、ありがとうございます。

毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。


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