ヒマリの気持ち 3
私が夢うつつの状態で天蓋を眺めていると、ルートが部屋に入って来た。
「すまない。1人にさせてしまって」
ベットに腰かけて、頭を撫でてくれる手が心地よくて、私は彼の手を取って頬を摺り寄せた。夢なら多少甘えたって嫌われないかもしれない。
「寂しかった‥‥」
「悪い」
「ルートと一緒に居たかった‥‥」
「ああ。俺もヒマリと居たい」
「もう、行かないで‥‥」
なんて甘い夢なのか。普通じゃ言う事も出来ない、甘えた我儘に、彼は笑顔で応えてくれる。かなり妄想が爆走してこんな夢を見ているのかと恥ずかしくなったけど、今だけは彼がいるからと独占してしまいたくなった。
「ルート?!」
「おはよう、ヒマリ」
次の朝、大きなベットの隅っこで寝ていた私は、起き上がった視界にルートを見つけて驚いた。
「1人にして悪かった。準備段階でジスタノ王と王妃は、ハッシュフル王国の宮殿に送り届けたから、もう大丈夫だぞ」
笑顔で言われて、何となく無理をさせたのが自分だと分かっているだけに、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「明日はファルが作った魔道具で結婚式を見よう」
「ルートは王様と一緒じゃなくて良いの?」
「実は、俺も魔力に近いエネルギーを持っているから、ハッシュフル王国の中心部には近づけない。ヒマリのドリアードとホミバードに協力してもらって、送れるところまで行ってきたんだ」
後は王の騎士団が守るだろうと、寝っ転がっている。聞きたいことは山ほどあった。
ログナージ殿下が扮していたエスタリークに何故自分を任せたのか。それを聞いてもしょうがない。任務には守秘義務がある。今回の件も、ギルドや王族からなら、尚更それは守らなくてはならない領域なのを、話せる範囲で自分に説明してくれているルートの誠実さ。
「勘違いしちゃダメね‥‥」
「何がだ?」
聞かれて素直に言えたら、こんなに悩みもしない。
きっと、これ以上守秘義務で覆われた依頼内容を聞くことは、仕事と私どっちが大切なの?!とヒステリックに聞いてしまいそうで、自分はそんな権利の無い人間だと言い聞かせた。
「‥‥疲れてるのにごめんね。今日は、お屋敷の庭の散策をするから安心して寝てて」
「待て。傍に居て欲しいんじゃ無かったのか?」
「え‥‥?」
「いや、俺はアイツがどんな奴か知らないで託してしまった。だからこそ、ヒマリに何かあったらと思うと気が気じゃなくなった。今回の件だって‥‥いや、取り敢えず、1人にする気は無いし、ヒマリも良く眠れてないだろ?」
動くのはちゃんと寝てからだと、ルートの腕の中に閉じ込められてしまった。
「勘違いしちゃうから、こういうのやめて」
「勘違いすればいい」
「どういう‥‥」
「ほら、さっさと寝ろ」
ルートの手は心地よく頭を撫でる。安心して眠れる場所で、私達は夕方まで眠り続けてしまった。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




