ヒマリの気持ち 1
「おはようございます、ヒマリさん。お2人とも早いですね」
「おはようございます、ザラファノさん」
あれからザラファノさんがお世話になっているお屋敷に移って来た私達は、騎士団へ向かうザラファノさんと毎日朝食を一緒に食べている私達。
「ヒマリ様、こちらエスタリークと名乗る方からの贈り物です」
「‥‥いつも通り、セバスさんの好きな所にお願いします」
シオンヒーク騎士国家のマジェスタ侯爵家。その領地にある家の1つがクオシールの町にあるという事で、ザラファノ騎士隊長がお世話になっているらしい。
ルート曰く、シオンヒークの貴族は英雄伝説などを好むため、Aランク冒険者やSランク冒険者を無条件で滞在させてくれる事が多いのだという。他にも、異世界の人間の擁護などを率先してやっている。
今回はSランク冒険者と護衛される異世界をを泊まってもてなしたという事実が貴族の自慢話なると、セバスさんが教えてくれた。
「国が違うと、価値観も考え方も変わるのね」
「そうだね。ヒマリさんはモテるんだなぁ。毎日、もう4日目だ」
「ヒマリにしたら迷惑なんだよね、恐怖でしかないし」
食後のデザートを食べ終わって紅茶を飲んでいたのに、毎日送られて来る花束と手紙に辟易していたら、今度はザラファノさんにイジられてしまった。
執事長のセバスさんまでもが、熱心な私の求婚者だと思い込んでいる。
「ルート、今日は遅いの?」
「ああ。一旦、シオンヒークのジスタノ王に会う為にも、王宮に出向く必要があるからな。結界石を置いて行くから部屋で寝ててくれ」
「ルート、私も気にかけておくから安心して良いよ」
「ありがとう、ファル。ルート行ってらっしゃい」
私が席を立つと、ファルはザラファノさんとセバスさんにログナージ殿下の事を話始めたみたい。
この国の男女間の付き合いはとてもしっかりしていて、私がルートの部屋で眠っているのを勘違いしているっぽいので、ファルが誤解の無いように私が怯えて寝れなくなった経緯を説明することになった。
「大変申し訳ございませんでした。ルート様がお戻りになるまで、メイドを2人ほど付けたいと思いますが、大丈夫でございますか?」
「え‥‥」
謝れることは想定していたけど、まさか、メイドさんを付けて1人にならないように考えてくれるとは思わなかった。
「‥‥あ、ありがとう、ござい‥‥ます」
「もっと早くに気付くべきでした。エルフのシルビィと獣人のルジェッタです。二人共、メイドとしてしっかり教育されています。さ、こちらに、ヒマリ様に誠心誠意お仕えなさい」
紹介されたシルビィさんとルジェッタさんは、綺麗な所作で挨拶をしてくれた。シルビィさんは金髪の青い目をして、後ろで髪をまとめている色白の綺麗なお姉さん系。ルジェッタさんは、茶色いフワフワした髪に、ぴょこんと尖った耳がピクピク動いている、緑の目の可愛いお姉さん系に見える。
「私達がルート様がお帰りになるまでご一緒しますので、ご安心下さいませ」
「ありがとう‥‥なんか、涙が‥‥止まらない」
この日、私は目が腫れるまで泣いてしまった。
それほど、全く知らない異世界の価値観を押し付けられる恐怖が、かなり自分を追い詰めていたのだと知った。真逆に、異世界に来て私の意志を尊重してくれていたルートとファルの存在が有難かったけど、それに甘えて迷惑をかけている自分が情けなく思えていた。
セバスさんが目の腫れを取るための治療薬を冷やしタオルに沁み込ませてくれたのだとシルビィさんとルジェッタさんに言われた時は、感激の涙で二人を驚かしてしまった。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




