ログナージの立場 1
「夜中に女性の部屋に訪問するのも憚れる事なのに、勝手に魔法で解錠した上、抱きつくなんて王子のする事なのか?!」
ファルの説教に、エスタリーグの姿になっているログナージ殿下は全く反省していない。あまりの自分勝手で無神経な態度に、私も理不尽な彼の行動に怒りが頂点に達してきた。
「エスタリーグ、お前の国の習慣や習わしは特殊だ。トランジット出身のファルがそこまで嫌悪しているのが分からないか。ましてや、ヒマリは武士が居た日本という国の人間だ。貞操観念は厳しいと覚えておけ」
「ルート‥‥習慣て?」
いつの時代の話かと思われるような武士なんて言葉が出てきちゃったけれど、節度の無い迫られ方は迷惑にしかならない。私のちょっとした対応の仕方に、勘違いさせるような事があったのかとか考えてしまったくらいだから。
「ハッシュフル王国はゾフランからの移民が多い上に、王族はそれよりも北の大地から来た民族だと言われている。」
「民族紛争でバラバラになって、今のゾフランとハッシュフル王国があるって言われてたっけ?」
「ハッシュフル王国より北の大地の人間は奴隷制もある国だが、考え方が特殊なんだよ。厳しい土地柄か子孫を残したいって気持ちが先に出過ぎてな、婚前交渉は当たり前だし、一応自由恋愛を謳っちゃいるが、マジで男女共に気に入ったヤツに手をつけようとする」
「ありえない!!!絶対にありえない!自由恋愛じゃないじゃない!」
私が怒ったように叫ぶと、ログナージ殿下が困惑した様に”何故”と返してきた。
「恋愛も結婚も当人同士の合意があってなされるものよ、一方的な感情を押し付けられて、女性に好きな人がいたらどうするのよ?!欲しいから奪うなんて、獣だって求愛行動でメスに気に入ってもらえるようにアピールするでしょう!殿下のやり方は獣以下です!」
「私は君に好きな人がいても構わない。君さえいてくれれば」
一発殴ってやりたい。いや、誰かこいつを何処か知らない世界に吹っ飛ばしてほしい。嫌悪感が先に来て、いくら文化の違いがあるからと言われても、到底納得のいくものでは無かった。
「ログナージ殿下、今後一切、私に触れないで下さい。私は意思疎通の出来ないような自分勝手な人間が大嫌いです」
「そんな‥‥それでは、私の気持ちは‥‥」
「ヒマリの怒りが収まるまで、近寄るなよ」
「本当に厚かましいよね。言っておくけど、次の宿泊先に無断で入ったら、この国を敵にまわすからね!」
あんまりだと嘆くログナージ殿下に、私は溜息を吐いて説明した。
「もし、此処が日本だったら、警察に突き出されて法で裁かれるような、ニュースになるくらいの事をしているのよ。私の文化では、殿下のやったことは恐怖でしかないし、考えるだけでもおぞましいもの」
「警察って騎士隊みたいなもの?」
「ええ。それに昨夜はルートにも迷惑かけちゃったし‥‥」
何と言う事か、あれから簀巻きにしたログナージ殿下を私の部屋に放置して、ルートの部屋で寝た私。
ルートはとても良い人で頼りにもなるけれど、キャンプで雑魚寝のような感じで、一緒の部屋で寝る事ができるかと問われると、否だ。
かなり意識してしまうし、逆に全く気にされていない自分にショックを受けている自分も居たりで、散々な夜だったのだ。
訳の分からない怒りとショックの他に、自分を保ちたい焦りが乗っかってくる。
「取り合えず、気持ちを押し付けるのはご法度。獣や鳥を見習って、先ずは心で好きになってもらえるようにアプローチすることだね」
ファルは御終いとばかりに、宿屋のご飯を食べ始めた。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




