グロットの末路とエスタリーグ
宿屋前の往来に叩きつけられたグロット王子は、反乱した兵士と共にギルド冒険者の手によって捕縛された。今回の件で、自分から過失を申請していたギルドマスターのクロノと副ギルドマスターの3人が率先して動いたらしい。
精霊への危害とエサル王の暗殺、ファレシア王女の誘拐、資源や税金の横領罪などが挙げられ、私への傷害罪も含めて、グロットは王族籍の剥奪と首を刎ねるよりも恐ろしい刑が執行されることになった。
ゼノン侯爵は第二王子グロットに王の暗殺を唆した教唆の罪、ファレシア王女の誘拐、資源や税金の横領罪などが挙げられ、侯爵夫人は隠ぺい罪、息子は殺人幇助の罪として、首を刎ねられることになった。
侯爵家は爵位剥奪のお取り潰しだったけど、14歳の令嬢だけは兄から王女を護ったとして、修道院に預けられ監視下に置かれるという。
血なまぐさい結末だったけど、町が燃えずに多くの命が救われたことは今回の件の救いだったかもしれない。人間が起こした事件は、人間によって裁かれたのだ。
他にも、温情としてギルド職員に救われた町の人々が嘆願書を提出し、ギルドマスターたちの処分が一時保留となったことも、情状酌量の余地という、改心すれば罪の軽減がされるという前歴を残した。
奇しくも、全ての決定や刑が実行され、落ち着いたのは上位精霊が定めた猶予期間と同じだったため、人々は精霊の裁きと名付けて、精霊への感謝や畏怖の心を保ち続ける礎とした。
「エスタリーグ、良かったのか?町が焼かれなかったのはお前の功績だろ?」
「良いんだよ。お陰でギルドマスター達は救われた」
実は街に火を放とうとしていた兵士を混沌させたのはエスタリーグさんで、倒れた兵士を片っ端から捕まえていったのが、ギルド職員と冒険者たちだったのだ。
「ファルの店に火を放ったのは、あれは?」
「幻覚魔法だよ。精霊を傷つけるわけにはいかなかったから、ドリアードの腕は煤で汚させてもらったんだ」
即興のアドリブで兵士を騙したのだと、にこやかに笑うエスタリーグさんだったけど、どうしてもやり取りの中に不気味さを感じて腑に落ちない。
「父親が刺されたのに治癒士に後を任せて街に飛び出すなんて、そこの不敬罪は無いわけ?」
「嫌な事をいうね。ちゃんと城の騎士団長と衛兵たちには指示を出してから出たよ。妹の件で君達を使っちゃってたから、ヒマリが心配だったし」
あれ?何か今変なことを聞いた?
「おい、二度とヒマリに変な術をかけるなよ?いくら王子でもブッ飛ばす!」
「王子?!」
ルートの言葉に私はエスタリーグさんを見たけど、彼は嬉しそうに笑っている。
「ねぇヒマリ、私のお嫁さんにならないかい?」
「はぁ?」
「今ならもれなく、王太子妃になれるんだけど」
「ま、まさかログナージ王太子殿下?!」
髪の毛を弄っていたエスタリーグさんが何かを唱えた。髪の色が黒色から白金色の髪に、瞳の色が緑色から青色に変わっていく。
あのドSな変態魔術師の正体が、物静かなログナージ殿下だったとは。あまりの衝撃に違った意味で声を失いそうだった。
どうりで、精霊たちもエスタリーグさんに手出ししなかった筈だと、今更ながらに納得した。




