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社畜はスローライフの仕方がわからない  作者: 真白 歩宙


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第二王子グロット 3

『今から声を発するな、ヒマリ!』


ドガッ!ガシャン!


「おい、いたか?!」

「奥にいるかもしれん!探し出して連れてこい!」


 ドアを蹴破って入って来た兵士の声らしき物が聞こえたが、二階からは見えない。声を出さない様にしていても、いつ見つかるかという恐怖心は抑えきれなかった。ガタガタと震える私の身体に腕を巻き付けて、落ち着けてくれた。

それと同時に、視界がどんどん上に上がっていく。

 少しして、天井の梁の上から二階の部屋を見下ろした形になり、ラレーヌが私の身体を彼らの目に留まらない場所に移動してくれた。

 そこへ、ハンゾウ長老の認識阻害と隠密のスキルで私達の身体が消えている状態になっている。


 見下ろしていると、鈍い色の甲冑を来た兵士が動く度に、ガシャ、ガシャと擦れるような金属音が鳴って物々しい雰囲気だ。

 そして、二階に上がって来た兵士たちは、我が物顔で部屋を物色しては、金目のものを盗っていく。最早、兵士に扮した盗賊や窃盗団の所業だ。


『ここは堪えるんじゃ』

『声を出したらダメよ。長老の認識阻害が薄れてしまうから』


 静かに頷いた時だった。


「そんな所に隠れていたとは。お嬢さん、私と共に来てもらいますよ」

「エスタリーグ様、何処に娘が居るんです?」


 ハンゾウ長老の認識阻害で隠れていた筈の、私の身体が浮いてしまう。

 ラレーヌが体に手を回して浮き上がらない様に押さえてくれているけど、何か空を切る音がして一瞬で天井が炎に包まれた。


『っ!ヒマリ!』


 それが火魔法だと知ったのは後になってからだけど、ラレーヌの腕が焦げて緩んだ隙に、体が下に引っ張られて落ちていく。


「二人とも逃げて!」


 そう叫ぶのがやっとだった。

 浮遊感と落ちていく感覚がコマ送りの様にスローモーションになって、床に叩きつけられる覚悟をした。


「落としはしないから、安心しなさい」

「貴方が仕掛けなければ、こんな事にはならなかったと思うけど」

「気の強い女性は嫌いでは無いが、逆らわれると()()せたくなりますね」


 強気発言は相手を喜ばすだけだと悟り、抵抗をやめて男を見たけど一瞬にして私の心は折れた。

 怪しさ満点の仮面男だったからだ。黒っぽい色の鼻から上の半面マスクを着けた、これまた黒いフードマントを着た男。伸ばされた腕が迫って、中に白いローブを着ている事は分かっても、言動も相まって不気味さ怖さは想像以上だ。


「ふふ、大人しくなりましたね。素直に従う女性(ひと)は好きですよ」

「いやいや、全面拒否させて頂きます!」


 慌てて逃げようとしたら、その男にガッチリと体をホールドされている事に気がついた。


「怪しい人に着いて行っちゃダメだって教育されてますので!ちょっと、離して、お近付きにはなりたく無いです!」

「困りましたねぇ。これから私は貴女を(さら)おうとしているのですから。それに、この私から逃げれられますか?非力なヒマリ」


 耳に名前を囁かれて、ゾワッと鳥肌が立っていく。恐怖心でガタガタと震え出してしまった。


「さて、目当てのお嬢さんは捕獲出来ましたから、私はこれで行きますが、あなた方はどうするんです?」

「奴らの根城(ねじろ)を教えてもらって助かったが、俺らはここら一帯を焼いて・・・・」


 バタン、バタンと倒れていく兵士達。よく見ると、泡を吹いて昏倒している。

 兵士達は街に火を放つと言っていた。ハッとして天井を見上げると、そこには何も無い普通の梁があり、ラレーヌとハンゾウ長老が此方を見ている。


「!」

『大丈夫よ』


 ラレーヌの腕を見たら、遠目だけど焦げていなかった。良かったと安堵していたのに、身体が浮いて外に連れ出されてしまった。

 目の前を、松明を持った兵士が数人走っていったが、何かに射貫かれたように全員倒れていく。


「え?!」

「さぁ、行こうか。お前達、心配なら勝手について来るがいい。但し、手出しは許さない」

「誰に向かって?え、ええっ?!」

「少し黙ろうか、それとフードを‥‥案外可愛いじゃないか」


 人指し指で口を押さえられた瞬間に口が開かなくなって、声が出なくなってしまった。パニックになる私の頭に後ろにやっていた”気配を消せるローブ”のフードを被せて、クスクスと笑っている。

 この気配を消せるローブ、よくよく見たらフードに猫耳の様な物がくっついていたのだ。それを被せて可愛いとのたまう男は、変態さん決定だと思う。


「移動するかな」

「!!」


ヒヒ―――ン!


 男は軽々と私を抱きしめたまま、宙を舞って馬に飛び乗った。クルリと一回転する視界が目に入り、馬の背にストンと乗っかってしまう。

 (いなな)きは驚いたからだろうけど、あっさりと主導権を握ると、そのまま何もなかった様に走り出した。


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