キメラの雷鳥さがし 142
アレンに飛び掛かるシシドラン。それを嗤いながら私を連れて行こうとするバーテンダー。
足掻いても長身の男との身長差はどうすることも出来ず、小脇に抱えられてしまい、手足をバタバタさせて抵抗した。
ドッカーン!
爆発音と空を割く音、辺りに広がる粉塵と煙。
そして、ズザザーッと、何かが行く手を阻んだ。
ガルルッ、低い唸り声を出して此方を睨む金と銀の4つの瞳。
直感的に白黒のシシドランだと理解し、それでも進もうとするバーテンダーの足を蹴った。体制が崩れて私は地面に転がり落ちた。
大きな瓦礫にぶち当たって、痛みに身体が熱くなった。足元を見れば、何処で切ってしまったのか太腿が切れて血を流している。
ドクドクと脈と共に流れる様な感覚。
動脈やっちゃった?!
フラフラになりながら、アレンの声の方へ行こうとしたけど、自分の直ぐ後ろに白黒の気配を感じて、思わず叫んでしまった。
「助けて、トゥルエノ!」
ビシャーン!ドガガガッ!
落雷と共に雷鳥王トゥルエノが現れた。強烈なトゥルエノの落雷に黒い頭が吹っ飛ばされ、周りに居た2匹のシシドランが消し炭になり、辺りの空気がピリピリと落雷の余波が立ち込めている。
「遅い!我はそなたに呼ばれないと力を揮えぬのだぞ!」
「トゥルエノ、ごめん、ありがとう」
開口一番にお説教するトゥルエノに、ホッとしながら白い頭のシシドランが黒を回復させている。
「トゥルエノ、あのシシドラン変異種らし、いの、白い方、回復‥‥」
「ヒマリ?!怪我をしているのか!」
何かが足に貼られて、出血は止まった気がしたけれど意識が朦朧としている。
「ヒマリを守って下さり、ありがとうございます。雷鳥王」
「うむ、出血が酷かったようだ。儂があの白い方をやる、お前はその剣であの黒いのを切れるか?」
トゥルエノの力ならあの変異種を倒せそうだけど、アレンを見て彼に戦えるかを聞いている。ぼんやりとした視界に、トゥルエノとアレンが共闘している姿が映った。
「あれは雷鳥様?ヒマリ様、大丈夫ですか?!」
「アル、見て‥‥彼は精霊剣士の属性を持っているの。精霊騎士の称号は後から付いて来る‥‥」
「アレン様が精霊剣士の属性?では、資格を持っていらっしゃった?」
私は小さく頷いた。
「鑑定眼で視たから、偽りない真実だよ。今まで精霊剣士が、皆が言っている精霊騎士と同じか分からなくて言えなかったの」
「では、アレン様が風炎鳥と会えば契約を結べるのですね!」
「ごめん、それは分からない。私は視ただけで、契約にどんな条件があるか分からないから」
「いいえ、ヒマリ様、貴女は我々の希望です」
アルが私を抱き上げて、闘いの余波から守ってくれている。
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