国とギルドと 2
「ホミバードの卵を仕分けして親鳥に返した後、帰り道であったファルから、ギルドに暴れたトレントの間引き依頼が来ていることを知りました。
その後の話の流れで、トレントの森に魔術師が入っていたことも情報として聞いたのです。その時、魔術師なら錯乱魔法か暴走魔法を使ったのではと推測して次の日に行きました」
「トレントの森のトレントは精霊級で一体一体がとても貴重な木々!国がそんな依頼を出す筈が無い。ホミバードの件にしても、精霊の卵を狙うなどと!」
エサル王やブロファル宰相、ログナージ王太子や騎士団長が驚いているということは、少しは希望が持てるかもしれない。
国を担う重鎮が、善悪を理解して暴走していないのなら救いはまだある。
私はルートとファルを見つめて、自分の能力を明かす決心をした。多分、伝わっているのか二人は笑顔で頷いてくれた。
「次の日、トレントの森に行った私達は、暴走したトレントに襲われましたが、二人が対処してくれたので私は目的を果たす事ができました」
「貴女の目的?」
「エサル王陛下、ブロファル宰相、ログナージ王太子殿下、私には鑑定眼スキルがあります。鑑定眼で確認すれば、暴走しているトレントがどのような状態であるのか分かります」
ハッとしたように、私を見る三人はゴクリと生唾を飲むような緊張を走らせている。
「鑑定には、暴走ではなく悩み事として、夜な夜な訪れる魔術師に、錯乱状態にされて仲間を傷つけてしまう事を悲しんでいるとありました」
「待って頂きたい、それだけの鑑定となると、ヒマリ殿の鑑定眼は」
「ブロファル宰相、それ以上は個人情報を公開することになりかねん。ヒマリ嬢、エサル王として私が貴女の身の安全を保障しよう。王太子もその心づもりでいて欲しい」
宰相の言葉を遮って、私の身の安全を約束してくれたエサル王は、とても優しく平民にも配慮をしてくれる名君なのかもしれない。
「ルートとファルの見解では、狙われているのは精霊ドリアードが狙われているのかもしれないという事で、ドリアードを探しました。」
「ドリアード様と会えたのですか?!」
ログナージ王太子殿下は驚いた様に切り替えしてきたけれど、流石に話の腰を折っては悪いと思ったのか、自重した笑みを浮かべて手振りで話を進める様に促してくれた。
案外、素直な方なのかもしれない。
「ホミバードの長老から教えて貰い、ドリアードに会って話を聞いた結果、彼女はあらゆる植物に干渉できるので、王城で王族と貴族が良からぬことを企てている事を知っていました。
そして、魔術師によって錯乱されトレントが暴れて、ギルドに間引き依頼がもたらされた。
ルートとファルの働きによって、夜にやって来た魔術師は捕縛され、ギルド内部で国の依頼を通そうとしていたギルドマスターのクロノと副ギルドマスターのガジュアが此処に来る羽目になったのです」
「ヒマリ殿、ドリアード様は、その‥‥なんと?」
恐る恐る聞くような怪訝さを見せて、ログナージ王太子殿下は気になっている事を聞いて来た。
国の行く末を思えば当然なのかもしれないけど、私にそれを伝える勇気は無い。でも、このまま押し黙っている事はできないので、直接話し合ってもらう方が良いのかも知れないと思った。




