キメラの雷鳥さがし 138
「あんな短剣で大丈夫なの?!」
「ヒマリ、パニックになっているね。少し落ち着こう。多分、シシドラン1匹ならアレンとアルで倒せるレベルだよ。ただ、今サーチに引っかかっている魔獣の数が多いから、結界魔法をヒマリにかけるよ。私も戦わないと不味いからね」
大丈夫だよとファルは笑顔で言うけど、シシドランという魔獣がどんな物かは分からない。しかも、索敵で魔獣の数が多いと言っていた。
しかも、奥の暗闇からシシドランが数匹現れている。
階段の壁を背に戦っているけど、このシシドランが街に出てしまったら不味いのではないだろうか。そんな事を考えていたら、扉が閉められたのか暗くなった。
「ファイアランス!」
「うぇぇ?!ファル、なんでこっちに打つの?!」
頭上を通り越したファルの火の矢が何かに当たって辺りが明るくなった。
見上げた先に、階段の向こう側から登ったのか、倒れたシシドランの傍に上がって来たシシドランが私を見下ろしている!
「なんで?!ロックオンされているの?!」
絶叫しながら、しゃがみ込んでしまった。トラの園に迷い込んだ小動物のような気分だ。野生の動物は、その群れの一番弱いものを狙うという。
ああ、このパーティーでは、私が一番の弱者だからだと、今更ながらに気付いてしまった。隠密スキルも嗅覚のある彼らには通用しない。
「ああ!もう駄目!」
そう思ったのに、薄い膜がドーム状に出来てシシドランの爪が弾かれている。
これがファルの言った結界魔法?
ガシッ!ガシッ!
結界魔法で守られているのは分かったけど、ファルの方にもシシドランが数匹向かっている!
「ファル、危ない!」
こんな時に自分は何も出来ない。私も攻撃魔法を使えるようになっていれば良かった。
軽い身のこなしで、シシドランの攻撃をかわして攻撃魔法を放っていくファル。その度にシシドランが倒れていくのだけど、量が半端なく多いのかもしれない。
アレンもアルも一人で相手をして、数匹倒していた。
ファルの魔法は、無駄が無い感じで、一匹、また一匹と狙いを定めて、急所に当たるように誘導したような動きだった。
倒している数は断トツで多い。S級冒険者の経験と技量の凄さがうかがえる。
「この地下、何で街の下にあるのに、こんなに凶悪な魔獣が多いの?!オカシイよ!」
「こんな状況だったとは!」
「ルートも居ないし、一旦退かないと、数の暴力に負けちゃったらどうにもならないかな」
数の暴力、そうだ、どんなに優れていても、数が多すぎたら魔力も底をついてしまう。
ルートが居れば、どうにかなったかもしれないけれど、今のメンバーだと徐々にジリ貧だと思えた。ファルはそれが分かっていたから、最初から私に結界魔法をかけて中の状況を探っていたのかもしれない。
階段へと移動し始めた私たちは、大きな地響きに足を取られて動けなくなった。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




