キメラの雷鳥さがし 135
「待ち合わせをしているらしいから、他のお客様の迷惑にならない様に一緒に探して来い」
「ええ?良いのですか?!」
「いえ、こちらも寛いでいる方々によっては話しかけられたり近くをうろちょろされるのも嫌がる方々がいるんでね、お客様同士に害が及ばない様にすることが目的ですので、お気になさらないでください」
あはは、なんて率直なご意見。
ボーイさんに付いて反対側のフロアに行くと、壁にそってボックス席のようになっている。
大きなソファーに座って色々なお酒を飲んでいたり、何人かで真剣な話をしながら飲んでいたり、綺麗な女性たちに酒の講釈をしてご馳走していたりと実にさまざまだ。
「いかがわしさが無いのが驚きね」
「お、お嬢さん、顔に似合わず凄い事言うね‥‥」
案内人のボーイさんが、何てこと言うんだと顔を引き攣らせている。
「ヒマリ、そんな店言った事があるの?」
「無い、無い、ただ純粋にお酒を楽しんでいて、お酒って凄いなって!」
ああ、アルが物凄い目で睨みつけてきた。
日本でよくやっている刑事ものだったりドラマなんかじゃ、ちょっと凄い恰好をしたお姉さんやママさんが居たりして、場末のスナックやキャバレーなんて感じの演出が多いから、こっちの世界での飲み屋やBARのイメージに慣れていないのよね。
「お酒を純粋に楽しむ、かぁ‥‥そういう飲み方してみたいなぁ、忙しくて飲むってこと楽しんでないもんね」
「ヒマリさん、ちょっとだけ喋らないでいて貰えますかね」
んきゃぁ!
アルの物凄い威圧感が!
「後でゆーっくり、思う存分お酒を飲ませて上げますから」
あはは、この世界では、女性がこういう事を言うのは、憚られることなのだろうか?
世知辛い‥‥。
とは言え、これ以上、執事のアルのご機嫌を損ねない様に、ボーイさんに聞いてみた。
「ボーイさん、一応ぐるりと見回ったけど、知り合いは居ないみたいなの。まさか2階には行ってないよね?」
「ご予約をしていたら上にいる可能性はありますが、今日は3組ほど使っていますが、2組は縁談で両家の顔合わせ中ですし、もう1組は商談で1時間は経過しているのでお嬢さんの知り合いでは無さそうですね」
「そう、ありがとう。多分、まだ来てないのね。席に戻って待ってみるわ」
踵を返して席に戻ろうとしたら、奥のボックス席から若い長身の綺麗な顔立ちの男性が歩いて来た。すれ違いざま、私の頭をポンポンとして笑顔で通り過ぎていく。
「い、今の何?」
「すみません、お客様。今の方はエンデンリンのエルフ族なのだと思います。お嬢さんを子供と勘違いされたのかと」
「ああ、エンデンリンの民は迷いの森の中に住んでいるエルフ族で、純真な者を精霊に近しい存在として、大切に愛でる種族でしたね」
何それ?微妙な感じなのだけど。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




