国とギルドと 1
次の日、ギルドマスターのクロノさん。副ギルドマスターのエルリッタさん、ガジュアさん、ノイーリアさん。受付嬢のシェリーナさん、ミセルさんが立ち会ってのエサル王への謁見となった。
ログナージ王太子とブロファル宰相、騎士団長と数人の近衛騎士が立ち合いの形になった。謁見の間での公式的な話し合いは、その立ち会う人数に比例して護衛がつくけど、S級冒険者のルートとファルさんが王への報告を兼ねての護衛も担っているので、不祥事を起こしたギルドマスターと副ギルドマスターが謁見しても問題は無いとされらしい。
そう小声でファルが解説してくれているため、初見で人物相関図のようなものが頭に出来ている。
ただ、不祥事を起こした時点で、王に謁見できるというのが私的には理解不能だったけど。それだけルート達の存在は凄いのかも知れない。
「私は宰相ブロファル。あらかじめ言っておく、王の前での発言は嘘偽りの無いように。あれば、随所に置かれた魔石が反応する。そして、偽りは重罪であることを認識しておくこと」
「ブロファル宰相、そちらは異世界の日本から来た者と聞く。椅子を用意した方が良いだろうか?」
「そうでしたな。では、」
いやいやいや、王の前で椅子に座るだなんて出来る訳ないでしょう!
「大丈夫です。お構いなく‥‥」
手をブンブン振ってしまい、エサル王が座っている壇上の前に立つログナージ王太子と目が合ってしまった。ああ、やっぱり日本人体質だなと実感してしまう。愛想笑いを浮かべちゃうなんて、気弱な事なかれ主義のなせる業だと思う。
「立ったままで良いのだな?ここからは話が長くなるが」
「お気遣い、ありがとうございます。ですが、日本でも式典や皇族に会う際は、立って参加しますから」
状況によるけど、テレビで見る皇族への一般参賀はみんな朝早くから来て立っている。自分でも朝の朝礼や職場の会議なんかは、立会議という手法を使っているので慣れている。
「では、話を進める。問題案件としては、国からトレントの森が消えた事。ホミバードの姿が消えたこと。この2件で、知り得た情報開示を求めるが、先ずはS級冒険者のルート殿、ファル殿から」
ブロファル宰相の落ち着いた声が、謁見の間に響き渡った。
「私はギルドで暴走したトレントの伐採の話が、国から要請が出ていると聞きかじってね、その日の夜ルートとヒマリに話した」
「国がそんな要請を?!」
ファルの言葉にログナージ王太子が驚いているけど、エサル王とブロファル宰相は頭を抱えてしまっている。
「王太子、その件は後に」
「宰相、それは出来ないだろうな。悪いが、そのバカみたいな要請が原因で、精霊が怒って加護を取り上げたんだ」
「加護を取り上げただと?!」
驚くエサル王と王太子に宰相、他の面々も真っ青になっている。
「そのバカみたいな申請を第二王子の為に、通したのがギルドマスターのクロノと副ギルドマスターのガジュアだ。王太子が居ると言うのに、愚かな貴族は派閥を作って、第二王子をその気にさせて愚かな振舞いをさせた成れの果てだ」
とても的を射ているけど、簡略化され過ぎて王と宰相が固まっている。
「発言をしても?」
「‥‥ヒマリ殿でしたな、発言を許そう」
「そもそも、私とルートは屋台の叔母さんからホミバードの公園とトレントの森があることを教えてもらって、私が興味を持ったから案内してもらったんです」
「最初から調査では無かったと?」
「宰相様、私は旅行者であって冒険者ではありません。
でも、ホミバードの公園でホミバードの長老に助けを求められて、トレントがホミバードの巣がある木をなぎ倒して卵を混ぜてしまった事を知りました。
そして、その時に卵を盗もうとしている者がいたと言われたので、精霊を狙う者がいるのだということも知ったのです」
そう、あれは偶然居合わせて、相談されただけ。
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