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社畜はスローライフの仕方がわからない  作者: 真白 歩宙


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ギルドの悪いヤツって 2

 腕を切り落とされても、まだ利権が云々と馬鹿な事を言っているクロノに鉄拳をお見舞いしたルート。あまりのおバカな思考回路に、私は気が遠くなった。


「ルート、怒ってくれてありがとう。でも、それ以上やったら犯罪者になるから」

「加減はしているが、お前だって手を吹っ飛ばしただろ?」

「‥‥ちょっと黙ってて?」


 ニッコリ笑ったら、ルートは視線を逸らして黙ってしまった。


「さて、どうしたら正常な判断が出来るようになるのかしらね?丁度良い事に、ホミバードが落とした貴方の手に、こんな事したらどうかしら?」


 落ちている手の切断部分に小さな種を蒔いた。そして、落とされて無くなった体の部分に戻してあげた。すると、傷など無かったかのように、綺麗に塞がっていく切断部分。


「ここまで凄い力だとは!」


 感激しつつも、私を捕まえようと手を伸ばすクロノの身体は、そのまま動かなくなった。


「ギルマスが正義に生きないのなら、そうなる様にしてあげるわ。蒔いた種はトレントの種」

「なんだそりゃ?!」

「貴方が悪い事をするたびに、種は育つの。やがて身体を蝕み動けなくなって、トレントになるわ。やがてトレントとして人間に切られて材料になるのよ、素敵でしょう?」


 このギルドに来て自分がおかしくなった気がする。私は人を木にするような魔法なんて持っていない。そもそも、鑑定眼だけで魔法は皆無だ。


「‥‥ラレーヌね?!」

『あら、バレちゃった!』

「人の身体を無断で使わないで!契約破棄するわよ?!」

『ごめんなさい、ギルマスがとても頭にくること言うからつい‥‥』

「ちょっと出てきて説明して?貴女は何がしたいの?」


 ハッと我に返ったけど、独り言を言っている変な女だと思われたかも?

 ギルド側からしたら、さっきからギルマスの手を落とすわ変な種植えてるわ、えげつない女だと思われているに違いない。


「サイゾウもしっかり出てきて」

「うそ、ホミバードは分かるけど、ドリアード様?!」

「エルリッタさん、あ、あの女神様のような木の精霊がドリアード様なのですか?!」

「嘘だ、ここ数十年はドリアードが人間の目の前に現れた記録何て無いぞ?!」


 エルリッタさんにシェリーナさんが驚きの余り飛びついている。ギルマスは信じられないといった顔でラレーヌを見ている。


『愚かな人間の男、ヒマリに攻撃や何かしたり、ヒマリを馬鹿王子に捧げたりしたら、この国の全ての加護を無くすからそのつもりでいなさい!』

『″風の便り”を使えなくするのは容易いことを忘れるな!』

「風の便りまで使えなくなる?!」

「全ての加護って‥‥ギルマス!悔い改めてください!!国が滅びます!」


 真っ青になってシェリーナさんが叫んでいる。


「ルート、風の便りって何?」

「ん、ああ、遠方に居る相手に便りを届ける風魔法に近い加護だ」

「何それ、チートな」

「良かった、ヒマリ戻ったんだね。さっきの種植え付けるの、ドリアードだとは思ってたけど、ギルドに来てから雰囲気変わったよね、チェンジしたの最初から?」


 はて、いつから変になってたのかな?変になる原因は、多分‥‥


「ここの人たち、良い人は居るのだろうけど、自分の事ばかりで精霊を(ないがし)ろにしているから、ドリアードが怒ったのよ」

「って事だから、ギルマスのクロノ、王家の派閥云々にかまけていると、君のせいで精霊を怒らす結果になるよ?」

「こいつらは、人の事を考えている様で考えていない。だが、今回だけは考えないと、平民から嫌われるぞ?今回のドリアードの怒りは、バカ王子のせいで国が亡ぶ領域にきている」


 落ち着いて話しているけど、物凄く怖いわね。


「なんか、とても物騒な話ね?」

「お‥‥お前が言うのか?!俺の手を吹っ飛ばしておいて!」

『それをやったのは、このサイゾウだ。何か文句でもあるのか?』

『そして、あなたに種を植え付けたのは私。これ以上の蔑みも、愚弄も許さない。精霊はお前達人間の為にいるのではない。力を貸してやる事を赦しているだけ。感謝も無く、物扱いして狩るのなら、妖精も精霊も全ての加護現象を無くす』


 クロノは力無く項垂れた。


 人間が太刀打ち出来る様な事ではなかった領域に踏み込んだ代償は大きいと、ギルドの職員はドリアードに頭を下げて謝罪し、許しを懇願している。

 善良な人にとっては、今の状況は神々の怒りを目の当たりにしている様なものかも知れない。


「ラレーヌ、サイゾウ、目的は精霊を軽視する人間の意識を改める事なら、それ以上はダメよ?先ずは王様に状況を知ってもらうんでしょ?」

『腹立たしいのよ。攻撃してくるくせに、精霊が怒って加護を無くせば被害者になった様に泣き喚く』


 それでも話し合いは必要なのだと、私はラレーヌに言い聞かせた。

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