キメラの雷鳥さがし 118
「教皇様は正義の方ですよね、アレン・ロンバン公爵も今を憂いているお1人ですよね?なら、私は2人にあるべき姿へと戻って欲しいと考えています」
「ヒマリ様、どうして貴女がそんな考えを?」
「ヒマリで結構です。私は異世界人であり、鑑定眼を持っています。だから、精霊は私の眼を頼ってくれたの。行方不明の精霊を探すことは、この国の闇を暴くことになるから」
だから、一緒に事件の解決をして欲しいと伝えてみた。
「どのみち、貴女方の捕まえた犯人は教皇様の空間封印によって隔離されているが、首謀者の末端なら兵を動かす必要がありますね。しかも貴族騎士たちは当てにならないとすれば、私の公爵領の騎士団を投入することになる。それは一緒に解決する事になりますね」
20歳とは思えない、理論的な回答を頂いてしまった。
笑顔で手を差し出してくるアレン・ロンバン公爵の手を取ると、優しく握り返された。言葉にしない、“同盟”のような握手だった。
「もう1つの街ノルウェーノの街も怪しいから、ヒマリに鑑定を頼もうと思ったんだけど、これから行けそう?」
「おそらく、飲み屋やに行くことになるが。公爵はどうする?」
「ルート殿、私も同行しましょう。貴方方がどのようにして活動しているのか知りたいですから。私の事はアレンと呼び捨てで構いません、執事のことは」
「アルで構いません」
握手によって同盟の様な絆が生まれて、あれほど焦っていた執事のアルが何も言わなくなった。
アルが空間魔法で出した冒険者風の服に2人で着替えてくれたので、丁度5人のパーティの様に見える。私と同様に髪と目の色を変えられる魔道具で変装し、目立つ黒髪をしている者は居なくなった。
「ラレーヌ、何度もごめんね。空間移動は何人まで大丈夫なの?」
『百人とか千人じゃないなら。私もちょっと格が上がったの。2、3人から随分移動させられる様になったし、距離も10人程度なら長距離も大丈夫なのよ』
嬉しそうに語るラレーヌは、私の胸に付けているブローチから飛び出ている。
「じゃぁ、5人全員をノルウェーノの街に移動させてもらえる?」
『分かったわ。ちょっと待ってね、ヒマリから離れてから移動させるわ』
一瞬で景色が変わって、ノルウェーノの街の一角に到着した。
「見事な移動ですね。魔法や転移石を使っていないので、何の形跡も残らないとは」
感心しているアレンが、広場にある噴水の傍の木から出ているラレーヌを見て、しみじみと声を漏らしている。
周りを見渡すと、斑な茶色の屋根に青っぽい壁の家々が立ち並んでいる。噴水にのライトアップが丁度、家の壁に当たっていて水色のような青なのだ。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




