キメラの雷鳥さがし 114
返事をしてファルが皆を眠らせていった後、ラレーヌに拘束を解いてもらって外に出た。
『教皇、良いわよ』
「え?!」
私たちが飲み屋から出て振り返った瞬間、飲み屋の建物が色を失っていく。しかも入口が壁になって窓も鉄格子のようなものが嵌められて、とても小さな窓になってしまった。
「これが、教皇様の空間封印の魔法‥‥怖っ!」
こんな状態の中はどうなっているのかと聞けば、封印をされた身体は生命維持から解放され、感覚も無くなった状態で時が止まった空間に取り残されて、封印を解除されるその日まで空間を徘徊し続けるのだという。
「お墓に出るようなゾンビっぽい‥‥」
『とっても近いけど、腐ってはいない』
思わずゾンビを思い浮かべて身震いしてしまったが、ラレーヌはちょっと違うと笑顔で答えてくれた。
ただ幸いだったのが、封印をかけた時、ファルの眠り魔法をかけていたので、ゾンビの様に徘徊はしないで、ただ眠っているだけだと教皇様が教えてくれた。
「その空間封印は一斉検挙の時までとしましょう。他にもあれば行ってください。ミヤが回復したので、ヒマリたちを手伝いたいと言っていますが、どうしますか?」
「ルート、ミヤにこっちを手伝ってもらう?教皇様の居城にいると、1人で無理をしそうなんだけど」
ルートは黙って考えていたけど、首を横に振った。
「教皇、ミヤと話せるか?」
「ミヤ、ルートさんが、話があるそうですよ」
ラレーヌの通信が、ほぼ電話のような感じになっている。
「何かしら?」
「そっちで調べて欲しい事がある。なるべく隠密で調べるのと、公に巫女として調べて欲しい件だ」
「二重調査?」
「ああ。巫女としてその居城の古い建築図、設計図のようなものを。隠密では金の流れを帳簿と照らし合わせてくれ。特に商人や貴族とのやり取りを」
ルートが睨んでいるのは先の先。きっと地図で居城に印があったので、そういった空間の存在を確認したいのだろう。
「ミヤ、危険な真似はしないでね。絶対よ?」
「ええ。私も反省しているわ。なんせ、目覚めた瞬間からずーっとお説教だったんだから」
ミヤにとっては耳が痛いだろうけど、それはそれで有難い。
でも、今のやり取りじゃ、また無謀な事をしてしまいそうな気がする。
「こっちで地図を見つけたの。ミヤにも見て貰いたいから、そっちの捜査は深追いしないでね」
「教皇、もしかしたらロンバン公爵と会うかもしれない。これからだから、明日には1度戻るが」
「判りました。ミヤが暴走しない様、ジェスファーノと見張っています」
教皇様ったら、こんな冗談が言えたのね。物凄く意外で驚いたけど。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




