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社畜はスローライフの仕方がわからない  作者: 真白 歩宙


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キメラの雷鳥さがし 109

 ファルは計画がつぶれてガッカリしていたけど、ルートは穏やかな視線で私を見てクスッと笑った。

 今の笑みは何の意味合いがあるの?と気になったけど、奥のドアから出て来た、ならず者が私たちを取り囲んだので、一斉検挙(いっせいけんきょ)とばかりにラレーヌにお願いした。


「ラレーヌ、お願い!店内の人間たちを全員拘束して!」


 言った途端に、周囲からウガッとか、ガッとか、変な声が聞こえて、オーナーも柱から伸びて来た蔓に身体を羽交い絞めにされていた。

 ラレーヌの細やかなフォローで、私が言わなくても魔法行使が出来ない様に猿轡(さるぐつわ)までされている。


「うわ、圧巻だね‥‥ヒマリ、かなり怒っている‥‥よね」

「お前は人が嫌がっている根底を分かっていない」


 ファルが顔色を伺う様に見て来る。ルートが呆れた顔でファルに注意してくれているというのに。


「ファルにとって精霊との契約って使役ってことなの?」


 そう、ファルと私は根本的に考え方が違う。人であっても精霊であっても、魔法の様に“使う”という感覚で物事を見ている。


「私にとって精霊は、命と命、魂と魂の結びつきで、冗談でもその関係を賭けに使ったり、売ったり買ったりなんてしない。できないし、考えたくもない」


 同じ命を持つ者同士であって、信頼の上に成り立っている関係。だからこそ、大切で守りたいし、守ってくれたりするんだろうと思う。常に感謝で繋がっている関係なのに。


「魔法を扱うのに、ファルは魔法の根源どう思っているの?何も無いところから何かが生まれる筈もないと思う。精霊が生み出すエネルギーが世界を覆っているのなら、精霊に感謝している?」


 人は見えないものに対して恩恵を感じる事が少ない。


「魔法を駆使して、自分が操っている気になっていても、結果的にはそこに魔法の要素があるから操ることができるだけで、精霊が居なくなったら、この世界は魔法が使えなくなると、大図書館の資料に書かれていたの。それなのに、その精霊を賭けに? 私は冗談でも嫌だし、出来ない」

「ヒマリの言っていることは一理あるよ。でも、賭けたとしても、ヒマリの契約だし」

「ファル、()()()()()()()()()()()()なのは俺も分かっている。だが、世の中はそんなに甘くない。お前が賭けに負けていたら()()()()()()()()()()()()()


 うそでしょ?!

 ビックリしてルートを見たら、私が賭けを止めなかったらルートが剣を抜いて止めていたと、ルートは当たり前の様に言っている。


「あのクスッと笑いは、私が賭けを止めたから“良くやった”的な意味合いの笑いだったの?!」

「ああ、伝わらなかったか?」


 ルートぉ!言葉が少なすぎる!

 私がルートの言葉の少なさにヤキモキしている横で、ファルが雷に打たれた様に固まっている。


読んで下さって、ありがとうございます。

毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。



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