キメラの雷鳥さがし 105
「失礼ですが、そちらの方は召喚士様ですか?」
「神官様に“様”なんて付けて呼んでもらえる日が来るなんて、感激ですね!」
オーバーなリアクションをするファルを、友好的と受け取ったのか精霊について、根掘り葉掘り聞いてくる。
通常、飲み屋などの酒場では、相手が気を許して名を明かすまで聞いて来ないのが、暗黙のルールだとルートが教えてくれた。
そう考えると、初っ端から偽名でも名を明かしてくれたジノさんは、私たちに対して警戒心が無かったのだと言える。
ガッテスさんやニノンさんは2回目で名を教えてくれたから、最初は護衛の任務も兼ねて様子見していたのだと分かる。
「あのねぇ、そんなにガッツリ質問攻めにされても、答えられない部分が多いよ。召喚士はギルドとの保持契約があるから守秘義務があるの、知っているでしょ?」
「いや、そこを何とか‥‥我々も、」
「精霊のことを知ってどうするのさ?」
少し訝しむような表情でファルが問うと、神官達はそれ以上突っ込まなくなった。微妙な空気感が居た堪れない。
「本当に召喚士なのか眉唾物だな」
「羽だけじゃ本物の召喚士だと言い切れない」
前に陣取っていたラフなシャツを着こなした3人組の男性が、ファルを煽るような言い方をして来た。目つきも蔑むような、嘲笑に似た笑いで、不快感が感覚を支配するくらいだ。
奥に居る者も、ファルをジッと見ている。
「これが、召喚士に対する周囲の反応なの?」
「地域によって違うが、ここは特殊だな」
じゃあ何で私を召喚士なんて言い方したのだろう‥‥まぁ、ラレーヌやホミバードがいつも一緒じゃ、そう言わざるを得ないのかも。この地域は特殊だと言うし。
『ちょっと良い?』
「お!ラレーヌ、どうしたのかな?」
『?』
思考を中断したのはラレーヌだった。木のスプーンから出て来たラレーヌは、私の肩に手を置いて覗き込んでいるファル見て、一瞬固まった。
「言われたからって、何も精霊を召喚すること無いのではなくて?」
『‥‥ああ、そういうことね。で、ご主人様は何をご所望?』
「この3つの小瓶に雫を貰いたい。それといつも伝達できるように葉っぱを貰える?」
『注文が多いわね‥‥』
ラレーヌが小瓶に手を翳すと、雫が数滴落ちていく。3つの小瓶にラレーヌの回復薬で満たされると、ファルは封をして空間収納にしまった。
『ホミバードが、用意が出来たら連絡をくれって、此方に来るらしいわ』
消えて普通のスプーンに戻ったけど、私たちに対する視線と認識が、驚愕と羨望が入り混じったモノに変わっていた。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




