キメラの雷鳥さがし 104
「不躾にすみません。今食べていらっしゃるのは、どのような料理なのでしょう?」
「ああ、旅の方なのですね。これはルルフィッシュという魚の料理です。揚げた野菜と、フルーツとスパイシーな香料を一緒に煮込んだソースで頂くのですよ」
「そうなのですね!」
「お嬢さん、こっちのボールンラビットをベルリーで煮込んだ肉料理も逸品ですよ」
「まぁ!この地方の料理は初めて食べますの。お魚とお肉、どちらにしようかしら」
チラリと見てルートに振ると、頷いてウェイターに両方の料理を注文している。そこに、手にエール2つを持ったファルが戻って来た。
「お嬢様のジュースはウェイターが持ってきますよ。食事は何を頼んだのですか?」
ルートが隣の神官達の食事に視線を送って、“お嬢様が興味を持たれた”と話している。当然、その会話は周りに漏れていて、視線があちらこちらから私へと向けられた。
この店に来るまでの間に、店内での会話をどうするか話し合っていたけど、ここまで反応が直接的だと思わなかったので、ちょっと意外だった。
「悪いが、今回は雷鳥と風炎鳥に協力を仰ぐしかないから、後で召喚してくれないか」
「まぁいいけどさ、こういった話は後でしようよ。人が多すぎる」
「ねぇ、貴方から貰った風炎鳥の羽、何に使えるの?このままドレスの飾りにしても良いけど」
ヒラヒラと紅色と橙色のグラデーションが美しい羽を手で振ってみる。視線は一気に風炎鳥の羽に釘付けになった。
そっとバックに仕舞い込んで、ファルに我儘を言う様に強請ってみる。
「ドリアードを見せてよ!私美しいもの大好きなの」
「それは無理だよ、こんな場所じゃ呼び出せない」
「つまんないの」
不本意な会話をしていると、ジュースと料理が運ばれて来た。取り皿にルートが切り分けして肉を乗せてくれたけど、とても洗練されていて手際が良い。
前から思っていたけど、本人が意識して優雅に振舞うと、今まで会って来た王族の所作よりも美しい気がする。
こんな事考えるのはちょっと失礼かもしれないけど。
「まぁ!これ、お肉も美味しいけど、このルルフィッシュのソースが絶妙ね!」
聞こえる様に絶賛すると、1人の神官が私たちに話しかけて来た。
「勧めた甲斐があった様で何よりです」
「ふふっ、魚の身もフワフワで海が遠いのに驚きですわ!」
「北の森に大きな深い湖水があるのですが、その湖水は遥か遠くの海と地底洞窟で繋がっているので、海の魚も湖で獲れるのです」
なるほどと、感心して話に聞き入っていると、神官達のテーブルから話しかけてきた。話題は勿論、風炎鳥や雷鳥の話だ。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




