キメラの雷鳥さがし 101
ルート曰く、
通常、教皇は即位まで誰もその身元を知らず、権力の餌食になる身内の様なものは居ない様に配慮されているという。
ジノさんが言っている事は、現教皇様の出自が特殊で、そう言った危険な政敵に弱みとなる身内の存在を知られてしまったから、教皇様の味方になる者たちを遠ざけられている?
「今の教皇様は清廉潔白な方、弱みを握られているとは考え難い気もするけど‥‥もっと深い事情があるのかな」
「それ以上は詮索しないで欲しい。できれば、教皇様自ら説明するまでは暴露の様な形はしたくない。ただ、これだけは言わせて欲しい。小さい頃から聡明で精霊や神獣に対しては絶対的な考えを持つ方だと」
ジノさんの言いたいことが、何となく分かる。
教皇様が自身の身の上を話すより、もっと切迫した事態があるから話せないでいるのだと。
「ジノステラン枢機卿、いえジノさん、教皇様が信用してくれているからこそ、出自やそのことに関する過去の話などは、精霊救出の後にと考えられていると理解しています」
そう、信用していないから話せないのではなく、しているからこそ。そして、教皇様はその力の根源に正義と慈愛があるから、精霊救出を一番に考えている。
「貴女方が理解ある方で良かった‥‥どうも涙腺が弱くてのう‥‥」
「聞きたい事がある。今のロンバン公爵はどっちだ?」
どっちって、敵か味方かってこと?
ジノさんはとても言い難そうにしている。
「わからん。実は、儂に引導を渡したのはロンバン公爵での」
「はぁ?それ、もう敵認識って事じゃないの?!」
ファルがとてもうんざり顔になっている。
引導を渡すって、さっきも“ロンバン前公爵と共にこの世から存在を抹殺された”と言っていた。でも彼は今目の前にいる。
「それは社会的に?実質的な死という事ですか?でもジノさんはここに居るし、じゃあ、ロンバン前公爵はどうなったの?」
ちょっと、頭が追いつかない。
「今のアレン・ロンバン公爵は、彼の父アルジンと儂をロンバン公爵領の炎の谷に追い込み、封鎖した。アルジンが居なければ、儂は消し炭だった。精霊、風炎鳥が住む谷は孤高の場所。人が立ち入って良い場所ではない」
「風炎鳥?!ロンバン公爵は代々風炎鳥との契約を結んでいたのでは?」
「知っておったか、アルジンが風炎鳥との契約の儀式をする前に、愚かな人間が谷にある風炎鳥の卵を盗んでしまった。
先々代は死ぬ時にアルジンに“憤怒の炎の加護”を受け継いだ。しかし、アレンはアルジンを谷に追いやった為、その加護を引き継ぐことはできなかった」
あれ?私たち持っていたよね?
でもその加護がどうしてそんなに必要なのかしら?
「憤怒の炎の加護は、如何なる炎にも耐性が出来る。それが無いと、王の元へ行くことが出来ないからの。アルジンは何回か試したが、王に会えず毎年チャレンジしていた」
「盗まれた卵は、どうしたのですか?」
首を横に振っているので、見つかっていないのかもしれない。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




