キメラの雷鳥さがし 92
「儂も知らんで、街の道具屋に売ってしもうたんじゃが、数日後には2つの帽子の羽飾りになっておったな。後は、この一本じゃ。北の森で拾った事を伝えたら翌日から変な奴らに尾行されてのう、困ったもんじゃ」
「うわー綺麗!虹色っぽい羽ね。お爺さん、尾行されて大丈夫だったの?」
お爺さんは、ルートが手渡ししたエールを受け取って飲むと、冒険者たちと乾杯をし始めた。
「ギルドに相談したら、ここに通っている奴らがこうやって日替わりで守ってくれてのう、有り難い限りじゃ」
なるほどと、頷いてルートを見ると‥‥もう一回鑑定をしろという顔をしていたので、鑑定をしたら情報が上乗せされていた。
慌てて、見渡せる人たちの鑑定をもう一回試みた。
どうやら、私の完全鑑定眼は、会話によって引き出される情報が上乗せされるようで、その場にいる冒険者たちにある種の連帯感のようなものがある事を知った。
「爺さん、礼にこれをやるから、もしもの時は使うと良い」
「これは、転移石かの?こんな高価なものは‥‥」
「その転移石ってちょっと特殊で、自分の思い入れの深い場所に飛ぶんだよね。冒険者にはちょっと不向きなアイテムだから、お爺さんが困った時に、強く思った場所に転移できるお助けアイテムってこと」
ファルが聞きなれない魔獣の名前を言って、そのドロップアイテムだから気にしないで良いと付け加えている。
周りの冒険者たちも、貰っとけ!と言ってくれたので、お爺さんは涙目になりながら受け取ってくれた。
そんな心温かい飲み屋から出た。
何回か路地を曲がった所で、ルートが口を開いた。
「ヒマリ、悪いがそこの壁に今集めた情報を映してもらえるか?」
「本当に見たいのがあったらストップって言ってね。サッと流していくから」
――――――――――――――――――――――――――――
トリコリオンの街の冒険者
個体:ロド
種族:人族
属性:弓使い
相乗効果:風の翼に所属で一定賃金を貰えている。
悩み事:シオニーに告白するか悩んでいる。
秘密の話:ギルドからの要請でジノ爺さんを守っている。
2日前に闇討ちしてきた相手に、ゲップ草の汁を投げつけた。
――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――
トリコリオンの街の冒険者
個体:ガッテス
種族:人族
属性:大剣の剣士
相乗効果:風の翼に所属で一定賃金を貰えている。
悩み事:ジノ爺さんの家での警護配置を考えている。
秘密の話:ギルドからの要請でジノ爺さんを守っている。
闇討ちしてきた相手が教会の人間ではないかと疑っている。
――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――
トリコリオンの街の冒険者
個体:ニノン
種族:エルフ族と人族のハーフ
属性:魔法使い
相乗効果:風の翼に所属で一定賃金を貰えている。
悩み事:シオニーが怪しい動きをしているのを、
仲間に話すか検討している。
秘密の話:ギルドからの要請でジノ爺さんを守っている。
シオニーに追跡テントウ虫をくっつけて、調査中。
――――――――――――――――――――――――――――
「へぇ、剣士でも教会が怪しいって思う何かがあるんだね」
「今の速度で読めちゃうの?」
ざっと20人ほどの情報を流してみたけど、この2人は速読術でも体得しているのだろうかと思えてしまう。
あれこれ考えつつ、次の教会近くの飲み屋に向かった。
ここまで読んで下さって、ありがとうございます。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
読んで頂けることが、執筆活動の励みになります。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




