キメラの雷鳥さがし 83
利点がないと自分が思っても、そうでないことがあるとか?
「もう一つは、何かの事故が起きて、そうせざる負えなかったとかね」
「どちらにしても、それを調べる前にヒマリを完全に浄化して安全な状態にする事と、俺達が調べた案件を1回ヒマリに鑑定してもらう事が先だな」
「確かにね。こっちの手がかりは貴族に繋がっているみたいだから、こっちの聖女の事件を先にしちゃうと感づかれて証拠隠滅される恐れがあるかも。それじゃぁ精霊たちを助けられない」
ファルの可能性を模索する見解に、ルートが堅実かつその可能性を割り出していくのに必要な方法を提示して、何に優先順位が来るのかを上げてくれた。
「そうですね。此方の異変を先に確認するのは止めた方が良いと思います。できれば、ヒマリ嬢の浄化を行って安全確保出来るまで保留。ルートさんの方は、転移石は設置してきたのですよね?」
「ああ、実はキメラの雷鳥を探していてトリコリオンの街から隣のノルウェンの街に運ばれた形跡を見つけた」
「ノルウェンですか?怪しい者が出入りできる事自体がおかしいですね。あの街は避暑地のような扱いで、遺跡とかがある観光地のような場所なのですが」
トリコリオンの街から北西に位置するノルウェンの街は、北を山脈が覆い夏でも涼しいので貴族の避暑地になっているという。
しかも遺跡というのが、前王朝の精霊信仰の神殿がある場所の為、巡礼の地でこの国の人にとっては、聖地とも言える場所が歴史保存地区として街のあちらこちらに点在していると、教皇様が話してくれた。
人の眼が観光目的であっても、景色や建物といった外へと向いている場所で、精霊を運び入れるような不審な真似ができるのか?
そういった事をやれるという状況が、最早、相当な組織化をしている証拠なのだとルートが指摘した。
「この街の何処かで、一時的に精霊を監禁している、もしくは、そこから何処かへと転移させる場所が存在すると考えた方がしっくりくるよね」
「その街の自治は、国防のロンバン公爵家が統括していますが、トラン男爵の管轄だった筈です」
教皇様の代替わりの時に、国防を担っていたロンバン公爵家でも代替わりがあり、20歳と若い公爵に全てを任せるより、その地域にいる貴族も治安維持に参加するようになって、統括をロンバン公爵に任せているという。
「貴族には貴族の思惑があったって見るしかないな。全てではなくとも、その時に善意だけで動くような奴らだけじゃなさそうだ」
ルートの言葉は、真実を言っただけだったけど、国の腐敗という世知辛い事実を浮き彫りにしていた。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




