キメラの雷鳥さがし 80
「全く、どうして、こんな時にだけ感が良いんだか」
ミヤはブツブツと愚痴ていたけど、さっきの表情はとても看過できないものに感じた。
もう二度と、身近な人のターニングポイントを見逃すことはしたくない。だから、少し提案してみた。
「ルートやファルが戻って一緒に作戦を立てない?彼らはS級冒険者だし、こういった陰謀めいた話をどう対処するかも、もしかしたら知っている気がするの」
怖いのは、皆が集まる前にと急いで情報収集をして、敵の罠に嵌ったり偽の情報を掴まされることなのだと説得した。
「ミヤは教皇様と親しいでしょ?もし捕まったら、捕まったという事実で教皇様は動けなくなるもの。それに、危険に挑む時は1人じゃなくて、2人、もしくは3人で組んで行動しないと」
「はぁ‥‥分かりました。居城探索はまたの機会にします。その代わり、魔道具機関内の受注リストを確認しに行きますね」
全く動かないという選択肢は無いのか、ミヤは自身のテリトリーである魔道具機関での調査をすることに決めたようだ。
受注リストということは、何か引っかかる出来事に対して、そういった特殊な道具が使われていたと考えたのだろうか?
「無理をしないで欲しいのですが、私が教皇として呼んだので魔道具機関の者としての責任感が強く出ているのでしょう。友として呼べば良かったと後悔しています」
「教皇様が大切に思う気持ち、ミヤ自身も分かっていると思いますよ。私たちが心配しているって分かったからこそ、聖女のいる場所の探索を取りやめてくれたのだと思います」
そう返すと、教皇様は困った顔のまま、しょうがないという感じで微笑んだ。
ミヤは自分の仕事にプライドを持っている。だから、止めた分だけ他のことで贖おうと、自分自身に求められていないノルマを背負って行動してしまう。
それがどんなに危険であったとしても。
「社畜的考え方で、分かる分だけ不本意に感じるなぁ。教皇様も私もミヤに無理して欲しい分けじゃないんだけど、本人は納得いってない」
「全くです」
いつの間にか、ソファーで隣同士に座り、ミヤを思って落胆している私たち。目が合ってクスクスと笑い出す。その時に、教皇様から感じた、彼女への淡い想い。
「ミヤ、早く帰ってくると良いですね。教皇様の胃が痛くならない内に!」
「ふふっ、そうですね。胃薬のご厄介にならない内に帰って来て欲しいですね」
ソファーの前にはローテーブルがあり、お茶とお菓子が3人分用意されている。小さな心遣いが、彼の優しさ。ミヤが喜んで食べていた種類のお菓子もあって、応援したくなった。
「コタロウ?」
『ハンゾウ長老から伝言です。ルート殿が連絡を取りたいと!』
「ルートから?!」
私は急いでラレーヌを呼んだ。
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