キメラの雷鳥さがし 72
しばらくして、ミヤが戻って来た。
「お帰りなさい、ミヤ」
「任務からの戻りで、お帰りと言われると新鮮ですね!」
私の手を取って、夕食に招待されていると歩き出すミヤ。きっと報告もその時なのだろう。
「ヒマリ、サイゾウを貸してくれてありがとう。お陰で罠に嵌らず難を逃れられたわ」
さらりと、とんでもない事を言ってのけるミヤの首を見ると、薄っすらと赤い線上の後がついている。
サイゾウが隠ぺいされた罠から出た飛び道具を弾き飛ばしたらしいが、他にも隠ぺいの罠が発動し、ミヤの首にワイヤーの様な物が触れて危うかったのだと教えてくれた。
「ミヤもサイゾウも大丈夫なの?」
『抜かりなく』
サイゾウの声がしてホッとしたけど、大図書館にそんな罠を仕掛ける敵の殺意に怖くなった。
「ヒマリに向けられたモノじゃないわ。サイゾウが直ぐに隠ぺいを解除して、敵の飛び道具が見えていたから対処も出来たし」
「でも、もし知らないで閲覧者が入っていたら危険よね?」
『追跡魔法へ探索した者への罠なので、それは無いと思われます』
どんなに近づいても、罠に触っても、起動させるだけの事をしなければ、普通の利用者には存在自体も気付く事は無いのだとサイゾウが付け加えてくれた。
「罠と言う時点で、無害と考えられるサイゾウやミヤは鋼の心臓の持ち主だわ」
豪胆としか言いようが無い。お互いが補い合って、ミヤとサイゾウは良いコンビなのかもしれない。
「しっかり、痕跡は掴んだけど、罠を張っている以上、残された痕跡の真偽は疑わしいわね」
「なら、私が見た方が良くない?」
「それも考えたけど、相手がヒマリのスキルを知っていたらアウトよ。誘い出された後、どうなるか分からない」
「そう、そうよね。じゃあ、サイゾウは当分の間、ミヤについててね」
『畏まりました』
曖昧な状態で行くのは危険だと言われてガックリしてしまったけど、ミヤだから大丈夫という訳では無い。だから、護衛も兼ねてサイゾウに頼んだ。
「ところでミヤ、この先は教皇様の居住区でしょ?」
「そうね。だからこの区域に入れる者は世話役しかいない。枢機卿や大司教も入れないのよ?」
そんな事を聞いてしまうと、緊張して足がもつれそうだ。
ミヤにくっついて、長い回廊を進んで行く。サイゾウもミヤの前では姿を現しているのか、時折、隠ぺい魔法や道具についてお互いに知っている知識を話している。
暗い回廊に誂えた、不思議な光を発する光源の魔道具が等間隔に設置されている。
移動距離が長かったので、城の一棟からもう一棟へと移動したのかもしれない。
幾つか大きな扉を通って明るい部屋に入ると、教皇様が長いテーブルについて座るように勧めてくれた。
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