キメラの雷鳥さがし 69
最初から違和感があったけど、今教皇様の前に出て確信に変わった。この間のログナージ殿下と対面した時と、向ける怒気や覇気といったものが違うからだ。
「マフシロン大司教は私の調査をしただけで、教皇様の言っている犯人ではありません。この犯人は、人のする事を隠れ蓑にして犯行を行なっているからです」
「では、真犯人を探すまでの間、マフシロン大司教には地下牢で‥‥」
「教皇様、今回の被害者は私です。そういった懲罰的な事は全て調べてからにして下さい。彼には自宅謹慎、もしくは監視を付けるかにして下さい。なぜなら、もし冤罪であった場合、教皇様自らご自身の身を窮地に立たせる事になります。そして、その非は私も被るからです」
誰にとっても良くない。
「教皇様、私の国にこう言った言葉があります。”疑わしきは罰せず”と。無暗に疑わしいからと言って、調査中に逃げもしない忠臣を牢屋に入れるなど、良くない噂が立ちますし犯人の術中に嵌るような真似は避けて欲しいです」
「貴女はあんな酷い目にあったのに‥‥私が疑って調査したのに」
マフシロン大司教は私の後ろで泣き崩れた。
「それに、教皇様は私のスキルをご存じですよね?」
私に嘘は通じない。
この事実は大きい。完全鑑定眼へと成長した私のスキルの前で、嘘を突き通すのは無謀だと、自分でもチートな能力だということが分かる。
「良いでしょう。マフシロン大司教、この城の中にある自室謹慎を命じます。同時に監視もつけます」
「寛大な御心に感謝いたします」
深々と頭を下げて、彼は呼ばれたジェスファーノさんと騎士の方に連れられて行った。
「良いところへ来てくれました、ヒマリ」
「何故、いきなりマフシロン大司教にあんなことを? 彼は教皇様の事だけを考えて実直すぎるぐらい業務に取り組む様な方なのに?」
いくら疑っていても、話が性急すぎる。というか、怒るあまり急いで解決しようとした‥‥そんな感じを装っていた?
「ミヤ、彼自身もその身を狙われて、この国の裁決によって断罪されそうになっていた?」
「そうしたくないから、教皇様は一芝居打ったんだけど、ヒマリが謹慎処分に話を持っていってくれたから助かったわ、流石ね!」
間違って犯人だったらどうするんだと思ったけど、私をここへ連れて来たのはミヤで、そのミヤは一芝居と言った。教皇様もミヤも、マフシロン大司教を助けようとしていた。
そして、私の能力を信じて采配を委ねてくれた。
「私が彼を視れば、”犯人かどうか分かる”その部分を信じてくれたのですね」
スキルや能力によせられる信頼がこんなにも凄いことに、私は少し怖く感じてしまった。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




