キメラの雷鳥さがし 61
神聖なエネルギーが水を通して肌から浸透していく感覚が広がって、眠りに誘われるように体から力が抜けていった。まるで、ゆりかごで揺られているような安心感。
「ヒマリ嬢、大丈夫ですか?」
「教皇様、ヒマリ様の息はありますが、沐浴の深層部で何があったのでしょうか?」
「普通に話して、気を落ち着ける様に言ってから入りはしたが、彼女の意識が深く神聖なエネルギーにこうも素直に反応してしまうとは‥‥」
あれ?陸地?天井が見える‥‥
「教皇様、ヒマリ様がお目覚めになられました!」
「ヒマリ嬢、目覚められて良かった」
視線を移すと、教皇様が私を見下ろしている。
「いつ、陸にあがったんだろう‥‥」
「陸?寝ぼけてますね。フフ‥‥沐浴中に意識が無くなったのですよ。此処は私の離れの部屋の1つで、決まった巫女と神官しか入れない区域です。少し休んでいなさい」
安心して寝ていなさいと言われて、重い瞼が再び閉じていく。
ずっと休息を意識的にとっていたにも関わらず、私の意識がしっかりとしたのは、1日経った後だった。
「部屋が、暗い?夜なのかな‥‥」
「お目覚めになられましたか?今、教皇様を」
「今が夜中なら、朝にして貰えますか。お忙しい教皇様の睡眠を邪魔したくないので、お願いします」
自分の真横で声がしたので驚いて見ると、巫女の装束を着た人が座っていた。起き抜けに、報告を後にしてくれとお願いしたのにも関わらず、笑顔で頷いてくれた。良い人だ。
「何か飲み物と消化に良いフルーツでも持ってきましょうか?」
「ありがとうございます。貴女は?」
「巫女のミヤ・トランと申します。ミヤとお呼びくださいませ」
ミヤさんはそう言って姿を消した。しばらくして、お盆にフルーツの盛り合わせと、お水を持って来てくれて、消化に良さそうな物を剥いてくれたので、少しずつ食べてみることにした。
「私、そんなに寝込んでいたんですね。しかも沐浴中に意識が無くなるなんて、溺れてたかもしれないなんて!」
そう考えると、私の異変にいち早く気付いてくれた教皇様に大感謝だ。
『大丈夫か、ヒマリ?』
「その声はサスケ?」
「そのホミバードはサスケ様と仰るのですね、ヒマリ様を心配されてずっと傍にいらっしゃいましたよ」
サスケにありがとうと言ったら、そっぽを向いて何でもない事だと言っている。ツンデレだったのかサスケは。
そんなサスケに、ミヤさんは別に用意した小さなフルーツのお皿を私のトレイの傍に置いた。
「ミヤさん、サスケが見えているの?」
「ええ、私は巫女ですから。さあ、サスケ様、こちらにどうぞ」
まんざらでもない感じで、サスケが私の布団の上に降りてきて自分のお皿のフルーツを啄み始めた。
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