キメラの雷鳥さがし 56
ルートは壁に表示された私の情報の部分に、状態異常がある事を指摘した。
「呪いの杭の余波で、衝動的な死への誘い状態とある以上、呪いを解呪する必要がある」
「でもさ、そこの壁にある”赤い杭”ってルートが聖水を使って無効化したんだよね?ジェスファーノさんもヒマリを庇って居たなら、何でヒマリだけノロ‥‥そうなっちゃてんの?」
「私の鎧は聖騎士の鎧で、聖水を使って作られている物なのです」
ああ、だからジェスファーノさんたち聖騎士の方は無事だったのか、納得だわ。
そこまで考えて、あの衝動的な事件が解呪しない限り、ずっと起きるのかと思うとゾッとした。ある意味、真夏のホラーより怖い!
「もしかして、あの場面で私だけが無防備な状態だったのかな?でも赤い杭に触ってないのに何で?」
「それは私から説明しましょう。杭を引き抜いた時に、赤い閃光のような光がでませんでしたか?」
出たかも?炎の光と一緒になって、分かりづらかったしどうなんだろう?
ルートを見たら辺り一面を照らすように光ったと教皇様に答えている。その受け答えに教皇様はとんでもない事を教えてくれた。
「今後、そういった物を扱う時には、気を付けて下さい。それは”断末魔の光”と言うものですから」
「だ‥‥だんまつま‥‥の、光って‥‥」
「呪いの魔道具の血しぶきです」
「ち‥‥しぶ‥‥きぃ‥‥怖っ!」
「そっか、それを被ったから状態異常になったんだね、ヒマリ」
笑顔で納得しないでよファル!
あわあわしていると、ルートが教皇様に解呪できるか聞いてくれた。
「安心して頂いて大丈夫ですよ。幸い私の居るこの聖域で1週間ほど過ごして、禊の生活をしながら体に入ってしまったソレを消滅させれば、身体に負担なく対処できる筈です。手短にするには、ヒマリ嬢の身体が持ちませんからね」
「禊の生活って、滝に打たれたり精進料理とか断食で身を清める潔斎みたいな?」
日本のイメージで聞いてみたら、滝には打たれない様で断食もしないと言われた。逆に私たちの世界の潔斎は凄い事をするのですねと言われてしまったくらいだ。
「沐浴の間があるので、日に3度入って清めて貰います。その後、聖水を飲んで、規則正しい生活をして頂くだけです。ただ、ルート殿とご一緒できませんので、精霊様と過ごされるのは如何でしょう?」
教皇様は言葉を伏せて伝えてくれたけど、私が一人で寝れないのを気にかけてくれている様だ。
「言われた通りにしてみます」
いつまでもルートに甘える訳にはいかない。そう思っているのに一番つらいのが、それだと自覚してしまい、どれだけ甘えていたのかとガックリ項垂れた。
「ルート、氷土竜の子も、キメラの雷鳥の子も、早く助けたいから頑張ってみるね」
「辛かったら、ラレーヌを通して話しかけてくれれば、声だけでも傍にいれる」
ルートの提案に、年甲斐も無く声を出して泣いてしまった。
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