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社畜はスローライフの仕方がわからない  作者: 真白 歩宙


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キメラの雷鳥さがし 53

 あれから、動けるようになった私は、昼食の準備が整うまで教皇様に連れられて、小さな部屋に入って椅子に座らせられた。

 小窓から差し込む日差しが、正午に近い事を告げている。小部屋といっても、20畳くらいはあるような部屋で、祭壇に聖獣が祭られている。お祈りをする部屋なのかな?


「ヒマリ嬢、先ほど貴女が行った所業は目に余ります。教皇である私の目の前で自傷するなんて!」

「すみません‥‥教皇様の治癒魔法のお陰で命が助かりました」

「ええ、全くです。自傷や自死なんて、一番自分を不幸のどん底に落とす行為です。貴女は何故、嫌いだと言っている人間のために死を選ぼうとしたのですか?何故貴女は自分を大切にしないのです。普通は好きな人のために生きるでしょう?自分を考えずに自己犠牲ばかり考える、そんな考えだから不幸になるのです!」


 教皇様は私の血で汚れたローブを気にもせずに、自傷することがどれだけ良くない事なのかを説明してくれた。そして、この部屋が懺悔部屋だったのだと気付いた。

 人目というより、ルートやファルを心配させない様に、部屋を移ってくれた教皇様の優しさに胸がジンと熱くなった。


「聞いていますか?二度と愚かなことはしない事です。貴女は自分が思っている以上に人からも精霊からも愛されているのですから、もっと自分を大切にすることです」

「‥‥はい」


 言われるまで漠然とした感覚だった。そうだよね、愛されていた。

 仲間であることも、帰る場所も、心の拠り所としてあるのも。愛されて愛しているから有るのだと。愛は姿形を変えて何処にでもある。


「もう、二度と自分を傷つけません。教皇様の言葉で実感できたから。かけがえのない仲間で大好きな人たち、心からの大切な人のために自暴自棄になったりしません」


 誓う様に教皇様に伝えた。優しい笑顔になった彼は、座ったままの私の頭を抱きしめて、無事で良かったと小さく溜息を吐いた。


「本当にごめんなさい」

「分かってくれたのなら良いのです。さあ、皆の所に戻りましょう、そこに着替えを用意しましたから、それに着替えて出てきてください。それから、汚れたローブは脱いだままその椅子に」


 教皇様が部屋を出て行った後、小さな机の上にローブが置かれていた。もうあの殿下に会うことは無いのだろうけど、少しだけ今の自分に勇気が欲しくて着る事にした。

 

「恐怖心にも打ち勝ちたいけど、無理はもうしない」


 時が解決してくれる事もあると、ルートが教えてくれた。多分、今の私に必要な気がする。こうやって、自分で意識的に決めていこう。

 そう言えば、出逢った初めからルートは私に決定権を委ねてくれていた。もしかして、私に足りない部分が分かっていたのかな。


ここまで読んで下さって、ありがとうございます。

貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。

読んで頂けることが、執筆活動の励みになります。

誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。

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