キメラの雷鳥さがし 49
何か言いたかったけど、口が震えて声が出ない。
「やはり、調査は口実でしたか。愛や恋を叫ぶ前に、人の心を学んでいらっしゃい、小僧」
「教皇、私はまだ話の?!」
「話し合いたいという希望を聞いてやった。しかし、実際はお前の気持ちを押し付けるだけの結果となったではないか?これは思慕を通り越した狂気なる暴力。それをこの教皇が見逃すと思うか、知れ者!」
教皇の身体が光って、白い翼のようなものが背中に現れた。
「これは”聖なる御業”の白翼!」
物凄い光に、聖なる御業がどんな威力を発揮するものなのか効果は知らない。だけど、絶対的な何かの力によって、その場に居た者が反撃出来るようには思えなかった。それほどの聖なる力なのだと。
教皇様の手に現れて握られた杖が、ログナージ殿下に向けられると光は殿下を包み込んで消えた。
「自国へ帰りなさい、話す機会は1度きりだと言ったはず。彼女にこれ以上の負担はかけられない」
「何を言われますか!私はまだヒマリに協力の申し立ても、告白も受け入れてもらってない!」
やはり、自分の要望ばかり。これでは、教皇様に迷惑をかけてしまう。私は席を立って、教皇様の傍に立った。
「ログナージ殿下、貴方の想いには応えられません。協力も要りません。」
「何故です?こんなに想っているのに、この想いを捨てろと言うのですか?!私が居れば、調査がし易くなります!」
調査の何たるかを分かっていない。
「王族の特権を使うのですか?」
「それが必要ならば!魔法もあります!」
「いいえ、貴方が一緒では捜査は中途半端になります。王族の特権は使いませんし、使った瞬間に犯人たちに逃げられます。そして、今貴方が王族の特権を利用して教皇様にこの場を設けさせたこと自体が、犯人の炙り出しに支障をきたす危険があります」
打ちひしがれたようにしていたログナージ殿下が、境界線を越えて此方の方へ走って来た。途端に発作的に身体が硬直して震え出したけど、それ以上の状態にはならなかった。
教皇様が盾になるように後ろに匿って下さったのと、ルートが私を抱きしめてくれてファルが魔道具を使う準備をしてくれたから。
「ヒマリ、どうしてだ!」
「何回も申し上げています!ザラファノ騎士隊長の居たあの場でも!今も!」
ストーカーの様な粘着質な想いを向けられても、恐怖でしかないのを何故分からないのか?
境界線を越えたログナージ殿下が東屋へ続く階段を走り上ってきた。
「教皇様、危ない!」
ジェスファーノさんが前で殿下を迎え撃とうとしたけれど、教皇様はその動きを制してしまった。その間も、徐々に迫るログナージ殿下の手が、東屋の入り口付近にいる教皇様の手前で動かなくなった。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




