キメラの雷鳥さがし 44
部屋にエールを持ち込んでの話し合いは夜更けまで続いた。
ジェスファーノさんから、トリコリオンとノルウェーノの街についての話を聞きつつ、何処が怪しいか目星を付けた。
目下、問題は首都トルノーエスで教皇様に謁見しつつ、ログナージ王子の協力を断り、自国へ帰るように仕向ける算段をしなくてはならない。
私の心と体の安定が、今回の事件捜査への復帰のキーになるのだと位置づけたけど、正直、言葉の通じない相手なため自信が無い。
「気が重いし、胃が痛くなってきた‥‥」
「私たち聖騎士も立ち会いますから、ご安心を。ルート殿とファル殿が傍に居てくれるでしょうし、必要以上に彼を意識しないで大丈夫です」
ハッキリ思考の外へと除外しておく方が心の平穏を保てると、ジェスファーノさんが事も無く言ってのけた。顔を見れば耳が真っ赤で、少し酔ってしまっているのかログナージ殿下に対しては塩対応だ。
皆が何倍目かのエールを飲み干して、謁見の打ち合わせに入った。途端にジェスファーノさんが、急に真剣な顔つきになってベットの上に置かれた包み紙を指さした。
そう言えば、此方で話し合うと決めた時に、手渡されたものだ。
「あれにはローブが入っています。その、教皇様が仰るには、ご自分が愛用されていた昔のローブで、力が宿っている服だから彼の気に当らないという事です。ただ、貴女はまだお若いので、洗ってあったとしても男性が来た物をどう思われるか心配していらっしゃいました」
そうか、この世界の女性は貴族や地位のある者は、嫌がるのかもしれない。私は洗ってあれば気にすることもないのだけど。
「有り難く着させて頂きます。抵抗なんて無いですよ。寧ろ、お守りを頂いたような気分ですし、心から感謝しています」
「え‥‥気になさらないのですか?」
「洗ってあるし、教皇様の気が宿っているローブを嫌悪する必要ってあるんですか?」
お礼を言ったのに、ジェスファーノさんは”男性が着た物を着る嫌悪感”を気にしている。
またもや、異文化の違いなのだろうか?隣に座っているルートを見ると、苦笑いしている。
「異文化交流って難しいのね。気にする部分が全然違う」
「はぁ‥‥私は、とてもナイーブな件だと思って、お酒の力を借りて勇気を出して聞いたのですよ。教皇様も無理難題を出されると、打ちひしがれていたのに‥‥良かったです‥‥ヒマリ様の寛大な心に感謝します」
「あーそっか、グランラードって神聖な国だという自負があって、貴族は勿論平民も自分の身に着ける物や道具、衣服に関して他者と共用するのを嫌うんだよ。特に女性がね」
「確か、この国の起こり‥‥建国史にまつわる逸話からの思想だった筈だ」
若干、涙目になっていたジェスファーノさんは建国史を語りだしてくれた。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




