キメラの雷鳥さがし 41
魔獣たちとアプランさんたちが上手くいきそうなのを確認できたので、宿屋に戻ろうとしたところ、サスケが飛んできた。
『ヒマリ様、カバロンが何かくれるってさ』
「カバロンが?」
どうしたのかとカバロンに歩み寄ると、彼は口の中から琥珀色の石を出して私の手の上に乗せた。
「ほんと、ヒマリって凄いよね。それ、カバロンの護身石だよ。魔道具として使えるんだけど、加工せずに持っているだけで身体にまとう事ができる優れ物でね。見えない甲冑みたいになってて、結構凄い威力なんだ」
魔獣と信頼関係を結ばないといけないから入手難易度が高い上に、1個体が渡すのは生涯において3つだけとされているらしい。
「3つって言ってもね、最後の1つは自分が持っている物だから、実質2つしか譲渡できない。討伐しても残らないんだよ、だから魔獣の心って言われてる」
「カバロン、そんな大事な物を貰う訳にはいかないよ。できれば、あなたの子共とかに渡して?」
慌てて返そうとしたら、カバロンは顔を摺り寄せてくる。
『持ってろってさ、これから苦難や困難があっても、物質的な攻撃はこの石が跳ね返してくれるって、持つのが面倒なら空間収納に入れても大丈夫だって』
「ルート、ヒマリがどんどん凄い事になってるね。ププッ‥‥最弱であって最強‥‥」
「カバロン、ありがとう。どうか、貴方たちに幸せな日々が続きますように」
そっと抱きしめて、お礼を伝えて離れると、カバロンたちは静かに用意された家に入っていった。
「ヒマリ殿、いや‥‥ヒマリ様、貴女は素晴らしいですね。そして優しく隔てが無い素敵な方だ」
感動した目で見つめて来るジェスファーノさんの熱意が凄い。ちょっぴり鼻息が荒くなった感じの彼は、嬉しそうに胸を張って馬を進ませている。
あれこれあったけど、ギルドの依頼内容は十分こなしているので、依頼クリアとなった。
宿に戻る途中でファルが依頼達成の報告をしてくれたので、私たちはゆっくりする事ができた。食事前にお風呂に入り、身支度を整えられたのは本当に助かった。
「思えば、1日にこんなに歩いたのも、あんな大捕り物をしたのも初めてだから、食べながら寝てしまいそう」
半分冗談で言ったつもりが、ジェスファーノさんは驚いていて、少ししてから納得したように頷いて、背もたれのある椅子を手配してくれた。小さなクッションまで背中に置いてくれる気遣い様だ。
ヘロヘロな状態だったので、ファルが席に着いて乾杯する時もジュースを頼んで、酔いつぶれるような醜態は見せないようにした。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




