キメラの雷鳥さがし 39
「随分貴重な物を貰ったね」
「ファル?え‥‥これ、そんなに貴重な物なの?」
「普通の風炎鳥の羽だとさ、1回使い切りなんだよね。それ半永久的に制限無いと思うよ」
そんなに凄い物だったのね。
オレンジがかった美しい羽に、どんな効能があるのかファルの言葉で興味が出てきた私はそっと鑑定してみた。
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風炎鳥の王子の羽
個体:風炎鳥の王子の羽
種族:風炎鳥の羽
属性:寒さから身を護る護符・炎の加護
相乗効果:
身に着けると極寒の地でも春の様に過ごせる。
凍傷から身を護る。部屋に置くと、温かくなる。
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何ですかこれ?凄い羽じゃない!!
驚いてファルの方を見たら、笑っている。ルートも私の手元を見て、羽の効果が凄かったのが分かったのか、肩を揺らして笑うのを堪えている。
「ヒマリ殿、少しよろしいですか。実は教皇様が、明日の朝ならば謁見という名目であの者との対面に付き添えると仰られているのです」
「わ、わかりました」
「できれば、今日の件やこれからの事を夜話し合えませんか?」
ジェスファーノさんからしたら、確かに今回の件は大事過ぎるし、謁見の前に教皇様に報告をしたいのだろう。
それならば、1つだけ見届けてからにしたい。
「北の農場主、アプランさんにモンキーチキンとロカバンがどうなったか確認してから、宿屋に帰りたいのですが‥‥」
「貴女は魔獣にまで優しいのですね。分かりました、我々もご一緒しましょう。馬があるので、乗って下さい」
建物から出ると、聖騎士の3人が自分たちの馬から降りて待機していた。手綱を渡されそうになったけど、正直、乗馬なんてしたことがない。
困った私はルートを見ようとしたら、横から黒い影が馬に飛び乗って手を引っ張られた。フワッと身体が宙に浮いて着地したのは馬の背で、気が付いた時にはルートの胸に寄りかかるように横乗りしていた。
「ジェスファーノ、悪いがヒマリは馬に乗れない。借りるのは俺とファルの分だけで大丈夫だ」
馬上から声をかけて、農園へと馬首を向けて歩き出す。そんなルートの横顔をチラリと見つめて、私の心臓は煩いくらいに激しく打っていた。
胸元が少し開けているのは、風炎鳥の王子を押さえて杭を取っていたからだけど、そこから見える肌には傷も火傷の後も無い。
いくら防具や身体能力が高くても、喉の粘膜まで平気かと心配になる。戦闘や先ほど過酷な状態を見れば見るほど、私の理解の範疇を越えている。
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