11 ルイーズの日常
ルイーズとリアムは、長旅を経て、辺境から我が家へ到着した。
玄関先では、ローラと手を繋いだミシェルが今か今かと二人の帰りを待っていた。
「ねえ…さま、にい…さま。おかえり…なしゃい」
「......ミシェル、ただいま。ずっとここで待っていてくれたの? それに……、呼び方も練習したのね?」
「うん」
ルイーズとリアムは、ミシェルの健気さに感動しているようだ。二人はミシェルを挟むようにして抱きしめている。
「ローラ、ミシェルに何かあったの?」
「奥様とご一緒されたお茶会で、同じ年頃のお子様に言葉を揶揄われたのです。それから、話し方の練習を頑張っているのですよ」
「......そんなことが。でも、まだ四歳なのよ…私たちのいない数週間の間に、あんなにも頑張って」
「お嬢様、ミシェルお嬢様はお強いですよ。大丈夫です。気長に見守って差し上げましょう」
「……そうね。私も練習に付き合うわ」
その日の夜は、家族全員でいつもより長めの晩餐を楽しんだ。食後のお茶を楽しむころには、眠たそうなミシェルを抱えて、ルイーズとエイミーがその場を後にした。
リアムも付いて行こうとしたが、ルーベルトにつかまり執務室に連れていかれたようだ。
晩餐前に入浴を済ませていたミシェルは、ベッドに横になるとあっという間に眠りについた。その姿を確認したルイーズは、エイミーに辺境での出来事を報告した。
「そんなことがあったの。ルイーズは、それで良かったの?」
「リオンさんのことはとても大切です。でも、今は侍女になるためにやるべきことが沢山あるわ。それに……、気持ちが追いつかないの」
「辺境伯の御子息には、もう少しゆっくりと進めてほしかったわね。ルイーズ、今は焦らなくてもいいと思うわ」
エイミーは困ったように囁くと、ルイーズを見て微笑んだ。
♢
暑さも落ち着いてきた頃に新学期が始まった。
長期休暇前とは違う教室の雰囲気に、皆の本気度を感じたルイーズは、講義や実習に意欲的に取り組んでいた。
朝から夕方まで勉学に励み、屋敷に戻るとリアムとミシェルと共に過ごす。そして毎晩遅い時間まで予習と復習に励んだ。
そんなルイーズを心配して、エリーとクレアとミアが休日の誘いを持ちかけた。
「ねえルイーズ、今度の休みに私の家に遊びに来ない?」
「いいわね。その後は買い物に行ってもいいし……、ルイーズ行こう?」
「たまには、息抜きも必要よ」
ミアの呼びかけに、エリーとクレアも遊びの話に乗ってきた。
「皆、ありがとう。——私も、遊びに行きたい」
「よし! じゃあ、今度の休みにうちの商会に集合ね!」
ルイーズが笑顔で頷くと、皆は少しだけほっとしたような表情を見せた。その後もこの集まりは、定期的に行われている。誰かに元気がないと、皆で遊びに誘い出し、心ゆくまで遊ぶ。その日はルイーズも、屋敷に戻るとすぐに眠りについた。
そんな風に過ごしながら、講義・実習・試験を繰り返して、気がつけば最終学年への進級が目前に迫っていた。
教室では、ルイーズとエリーが生徒会メンバーやパーティーの話をしているようだ。
「もう、皆さん卒業なのね……。何だか、寂しいわ」
「そうね。レアさんも、あれから数回しか登校していないし……成績はクリアしているから、学院長先生が卒業を認めてくれたそうよ」
「それは、良かったわ」
「でも、忙しいわよね。卒業式の一週間後に、王宮主催のパーティーが開かれるらしいわ。私たちには関係ないけど、卒業生は出席が決まっているし、今回は問題の件でも王族の方々から話があるそうよ」
「やっと、終わるのね」
「ええ、そうね」
ついに、カルディニア王国の全貴族が待ち望んでいたことが実現するようだ。




