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ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~  作者: 青依香伽
第6章 問題解決に向けて

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8 遠征帰還パーティー(当日)①


 深夜三時を過ぎた頃、リリーのいる部屋に一人の侍女とクレメント兄妹の叔母が忍び込んだ。

 二人はリリーのいるベッドに近づくと、顔を確認するかのように覗き込んだ。


 ベッドサイドに置かれているランプも消えている。暗がりで顔がよく見えないようだ。


「暗くて良く見えないわ。お前、明かりを近づけて」


 叔母は後ろに控える侍女に、蝋燭を近づけるように命令した。


「奥様、これ以上は気づかれます」

「気づかれても大丈夫よ。そのときは、口を塞いでちょうだい」


 侍女が言われる通りに明かりを顔の辺りに近づけた。


「顔が良く見えないわ。でも、髪は薄紫よね……本当に忌々しい。見ているだけで腹が立つわ!」


 叔母は侍女に向かい手を差し出し茶色い小瓶を受け取った。


「これは私が飲ませるから、この子が暴れたら、お前は押さえ込んで」 


「本当に……、やるんですか?」


「今更なに言ってるの。あなたたちが失敗ばかりするから、私がこんなことをしないといけなくなったんじゃないの!」


 小声で話す内容はとても物騒だ。


「時間がないわ、早くやるわよ!」


 震える侍女を余所に、叔母はベッドに眠る少女の顔を強引に上へ向けると、手元にある茶色の小瓶を急いで少女の口に差し込もうとした。だが、小瓶を持つ方の手首を寝ているはずの少女に掴まれた。


 何が起こったのか分からず慌てる叔母を、ベッドから起き上がった女性が羽交い絞めにすると突然部屋の明かりが点いた。


「拘束しろ!!」


 リオンの声と共に、ドアと浴室の扉を開けて騎士たちが部屋の中に入ってきた。


「ちょっと、何なの!! 触らないで! 離しなさいよ! リオン、叔母に向かってなんてことするの! 止めなさいよ!」


 突然現れた騎士に押さえ込まれ、身動きが取れない状態にされた叔母は喚き続けている。 


「リリーを亡き者にしようとした罪だ。貴女には、その他にも余罪が沢山ある」


「何を言っているの!? 私はここの女主人よ!! お義兄さんを連れてきて!!」


「それはこちらの台詞だ。これ以上おかしなことを叫ぶな。早く猿轡をはめてくれ!」


 叔母と侍女の二人は、辺境の騎士と王都の騎士によって地下に連れていかれた。


「レア、怪我はないか?」

「兄上、大丈夫だ」

「こんな危険な真似は、今回きりだぞ」

「分かってる、無理を言ってすまなかった」


 レアはリオンに謝ると、クローゼットの中にいる三人に話しかけた。


「リリー、怖い思いをさせて本当にすまなかった。二人とも、リリーと一緒にいてくれてありがとう」


「お姉さま、泣かないで。私は大丈夫だから」


「リリー……、すまない。リリーにこんな…辛い思いをさせて、本当に…すまない」


 レアは感情が抑えきれずに泣きだした。リオンはレアの頭を撫でると休むように告げ、リリーを抱き上げてベッドに向かった。


「リリー、一緒にいてやれなくてごめんな。今日中に、全て終わらせるから、少しだけ待っててくれるか?」


「お兄さま、大丈夫。ルーちゃんとリアム君が一緒にいてくれるから心配しないで」


「ああ……、俺もすぐに戻る」


 リオンは、ルイーズとリアムに礼を伝えると部屋を出て行った。



 ♢



 レアの部屋では、


 ルイーズとレア、そしてエリーとリアムの四人がソファーに座りながら話しをしている。レアはリリーの昼寝姿を視界に捉えると、取調室で交わされた話を三人に聞かせていた。

 叔母と娘のキャサリンは地下の一室で取り調べを受けた。リオンとシオンに問い詰められた二人は、辺境伯爵家で行った悪事を洗いざらいに話したようだ。


 リリーを敵視していた叔母は、姉にそっくりな彼女の存在自体が気に入らなかった。そこで、自国(隣国ロードリアス王国)の有力貴族から渡された〈呪いの宝石〉を使い、リリーを排除した後にクレメント家に入り込むという策略を持っていたそうだ。そのために、侍女を買収して、当主が留守のところを狙って仕掛けてきた。


 ルイーズはレアに尋ねた。


「レアさんのお母様を恨んでいたということですか?」

「そのようだ。叔母は最後まで、ここに嫁いでくるのは自分だったと、母への不満を叫んでいたそうだ」


 

 リアムは疑問に思ったことを尋ねた。


「隣国の有力貴族とは?」


「隣国の侯爵家だそうだ。その侯爵家と、この国の伯爵家にどうやら繋がりがあるようで、今は調査中らしい」


「この国の伯爵家……」


「その伯爵家には一人娘がいるんだが、この国の王族の血を引いているそうなんだ」


 エリーは驚いた様子でレアを見つめた。


「王族? どなたのお子様ですか?」


「調査が終了するまでは断言できないが、第三王女の孫に当たるらしい」


「「「えっ!」」」


「第三王女は、幽閉中に赤子を産み落とし、儚くなられたそうだ。そして、その赤子は隣国と繋がりのあるこの国の伯爵家に引き取られた。今回、その赤子の娘に当たる伯爵令嬢が、王立学園で新たな問題を引き起こした。見目の良い男子が数人、その娘に籠絡されていたらしい。その中には、第二王子と……、ルーちゃんの元婚約者の男爵子息もいたそうだ」


 ルイーズは目を瞑ると小さく息を吐いた。最後の言葉を聞いた瞬間、元婚約者の姿を思い出してしまった。


「その方たちは、無事なのでしょうか? 50年前のように、おかしな様子になってはいないのですか?」


「そこまで酷くはないらしい。第二王子の様子に気づいた第一王子とエリザベスが、上に報告をしたことで、陛下がすぐに動いたそうだ。今、その者たちは療養中だそうだ」


「そうですか……」


 ルイーズは婚約白紙をきっかけに、幼馴染としての情さえも置いてきた。自分のことに精一杯で、元婚約者に気を配る余裕などなかった。


「姉上は、何も悪くありません」

「そうよ、婚約は白紙になったのだから。相手のことを把握していないのは当然だわ」

「うん……。レアさん、話の途中ですみません。続きを聞かせてください」


 レアは頷くと、続きを話し始めた。


「今、王宮には隣国の第二王子が秘密裏に訪問している。どうやら隣国の第一王子と侯爵家、そして、この国の伯爵家が、今回の騒動の首謀者なのではないかと上の者たちは確信しているそうだ。王都はこれから騒がしくなるな……。まあ、こちらは今日のパーティーが無事に終わることを祈ろう」


「そうですね」


 ルイーズはレアに答えると、窓から見える明るい空に視線を移した。


 部屋の窓から外を見れば、門を潜り馬車が入ってくる様子が窺える。

 日が沈むころ頃にはパーティーが開始するようだ。



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