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ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~  作者: 青依香伽
第6章 問題解決に向けて

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6 遠征帰還パーティー(前日)①


 遠征帰還パーティーの前日



 遠征帰還パーティーに参加する者たちが、次々にクレメント家を訪れていた。門から屋敷まで続く長い緩やかな上り坂を、何台もの豪華な馬車が上ってくる。遠方から訪れる招待客で、坂の上は列をなしているようだ。


 辺境伯が開催するパーティーであれば、参加者も多く、規模も大きい。その光景を、部屋の窓から見ているルイーズは、その光景に只々驚いていた。


「エリー、リアム……すごいわよ。二人とも、外を見て」


 ルイーズは、その光景を視線から外すことなく、ソファーに座ってお茶をしている二人に話し掛けた。二人も窓に近づき、外の光景を確認している。


「姉上、明日はもっと人が増えますよ」

「そうね。前日でこうなら、当日はすごい人よね」


 しばらくの間、三人は窓から見える馬車の流れを眺めていた。



 ♢



 シャロン姉妹の部屋で夕食を済ませた後、ルイーズは部屋へ戻り軽く身支度を整えた。


「リアム、私リリーちゃんのところに行ってくるわね。昼間会えなかったから少し気になって」


 ルイーズは体調が回復してから毎日のようにリリーの部屋を訪れていた。その甲斐あってかリリーの体調もかなり回復した。今日は昼食後に会う約束をしていたが、リリーがお昼寝中のため引き返してきたようだ。


「姉上、もう遅いですし、今日は人が多いですから僕もついて行きます」

「ありがとう。それなら一緒に行きましょう。昨日、エリザベス様から聞いた話が気になるの」

「……僕もです」


 二人は、リリーのいるレアの部屋に向かう途中で、いつもとは違う空気の重さを感じた。ルイーズは、廊下の四方を確認するかのように視線を向けている。二人は顔を見合わせると、手をつなぎリリーの部屋に急いで向かった。


 部屋の前に着くとドアをノックしたが返事がない。二人は急いで中へ駆け込んだ。ベッドを見ると、いつも笑顔で迎えてくれるリリーの姿がどこにもない。焦った二人は、部屋の中を探し始めるがどこにも見つからない。その時、浴室の方から微かな音が聞こえてきた。二人は顔を見合わせ頷きながら走り出した。


 浴室の扉を開けると、一人の侍女が眠っているリリーを浴槽に入れようとしているところだった。二人に見られて焦った侍女は、リリーを急いで浴槽の中に放り込んだ。

 

「姉上はリリーさんを!!」

「…っ!わかったわ!」


 ルイーズは侍女とリアムを相対させたくないと思ったのか、一瞬迷いを見せたがすぐにリリーの元へ駆けつけた。湯が張られた浴槽から必死にリリーを引き上げると何度も名前を呼び掛けた。身体を打ちつけた様子もなく、浴槽に沈み込む前に助けることができたのだが、リリーは目を閉じたままだ。


「誰か―――!! お願い!! 誰か来て――――――!!」


 ルイーズの叫び声が響き渡る中、その声に気づいたリオンとクロードがリリーの部屋に駆け込んできた。二人は、開け放たれた浴室のドアに気づき中へ入ってくると、中の光景を目にした途端に動きだした。


「クロード、リアムを頼む!」


 頷くクロードを確認すると、リオンはすぐさまリリーに駆け寄った。ルイーズからリリーを受け取り急いでベッドへ向かうと横に寝かせた。リアムは、後ろからついて来たルイーズに事情を聞いているようだ。


「何があったんだ?」

「私たちが部屋に来たとき、リリーちゃんの姿が見当たらなくて…そのとき浴室から音がしたから…向かったら、あそこにいた侍女が、私たちに気づいた途端に…リリーちゃんを浴槽に放り込んで……その後、すぐにリリーちゃんを引き上げたけれど、目を閉じたままで……」


「レアはいなかったのか?」


 リオンの問いかけに、ルイーズ動揺しながら何度も頷いた。


 そのとき、浴室から侍女を羽交い絞めにしたクロードと、その横を歩くリアムがこちらに近づいてきた。


「クロード、その侍女をすぐにシリルに引き渡したら、じいさんを呼んできてくれ。それからリアム、ルイーズがびしょ濡れだ。すぐに部屋へ連れていって着替えをさせてくれ」


 クロードは頷くと、すぐに部屋から出ていった。その後に続くように、リアムもルイーズを連れて、急ぎ部屋に戻っていった。


 ルイーズは、部屋へ戻ると動きやすい服装に着替えて髪を一つに結わくと、リアムと一緒にリリーのいる場所へ戻った。


 ♢


 ルイーズとリアムがレアの部屋に入ると、医者が意識のないリリーを診察しているところだった。その隣では、心配そうに見つめるリオンとレア、そして痛々しそうにリリーを見つめるメアリーがいた。


 医者が診察を終えると、リオンに何やら告げているようだ。


「睡眠薬を飲まされておる……絶対安静じゃ。わしも今夜はここに泊まる。何かあったらすぐに呼びに来い」


 その言葉にリオンは頷き、レアは辛そうな顔で俯いたままだ。医者はメアリーに薬を渡して説明すると部屋を出て行った。


「すまない、リリー。私のせいだ……私が部屋を出なければ……」


 俯いたままのレアは、自分を責めるように何度もリリーに謝っている。


「レア、お前はずっとリリーの世話をしてくれていた。だから、自分を責めないでくれ。俺がもっと配慮するべきだった」


「兄上は悪くない。自分が面倒を見ると言ったんだ。それに、侍女たちを信用できなくて拒んでいたのは私だ……」


「メアリー、レアを休ませてやってくれ。その後は、リリーの世話も頼む」


「かしこまりました」


 メアリーはレアを連れて部屋を後にした。


「私にも、リリーちゃんのお世話をさせてもらえませんか? お願いします」


 三人のやり取りを見ていたルイーズは、話しが終わるや否や、リオンに手伝いをさせてほしいと申し出た。


「いや、しかし……」


 リオンが返事に躊躇っていると、部屋にシオンが入ってきた。


「良いじゃない、リオン。お願いすれば。ルーちゃんなら信用できるでしょう?」


「もちろん信用はしているが…………シオン、侍女の取り調べは終わったのか?」

「終わったよ。吐かないから、自白剤飲ませたら、聞いていないことまで話してくれたよ」

「そうか。叔母とキャサリンも客室に入ったようだ。明け方までには片を付ける」


 部屋を出ようとしたシオンは、振り向きざまに「もっと頼りなよ」と言い残し、その場を後にした。


「すまない。リリーの世話を任せても良いだろうか?」


 ルイーズは、「任せてください」と返事をしながらリオンに何かを尋ねた。


「リアムが一人だと心配なので、夜はこの部屋に一緒にいてもいいですか?」

「もちろんだ。しばらくの間は一人にならないように、是非そうしてほしい」

「ありがとうございます。では、分担などはメアリーさんに相談させていただきますね」

「わかった。ありがとう」


 ルイーズは、頷き返すと急いでリリーの傍に駆け寄った。部屋に戻ってからも気がかりだったのだろう。顔色の変化や髪が濡れてはいないか、着替えた寝間着は快適そうかなど、全てを確認するとリリーの手に自分の手を重ねて寄り添った。


その様子を見ていたリオンに、リアムが近づき話しかけた。


「リオンさん、忙しいんですよね。ここは姉と僕に任せて、シオンさんのところに行ってください」

「リアムありがとう。そうさせてもらうよ。この部屋にも護衛はつけるが……。二人をよろしく頼む」

「はい」


 二人のことをリアムに任せ、リオンは急いでシオンの元へ向かった。



 ♢



 リオンの執務室——


 キースとクロードとシオンの三名が今後の流れについて確認をしている。


「皆、待たせた。ブライスはまだ戻ってきていないのか」

「ブライスは、シャロン伯爵令嬢の護衛中だよ。あの子は攻めが強いから、色々引き出してくれるんじゃないかな。それで、リリーちゃんのお世話はルーちゃんに任せてきた?」

「ああ」

「真面目な子だし、面倒見が良さそうだから、少しは甘えればいいんじゃないかな」

「確かに」


 部屋へ入ってきたリオンにシオンが声をかけると、その後ろではクロードが相槌を打っている。


「——そうだな。ルイーズがリリーを気にかける様子を見ていたら、何だかすごく安心したんだ」

「リオン……良かったね」

「ああ」


 リオンとシオンの会話を聞いていたキースが、リオンに発破をかけた。


「婚約したかったら、早く解決しないとな」

「そうだな」


 三人の会話に頷きながら聞いていたクロードが口を開いた。


「皆さん、打ち合わせの続きをしますよ」

「クロードすまない。続きから頼む」


 クロードはリオンに頷くと、皆に向けて話し始めた。


「現時点では、計画通りです。今、シャロン伯爵令嬢がキャサリン嬢の部屋でお茶をしています。護衛としてブライスと王宮の騎士が一名ついていますので、何か起きたらその場で捕縛します。我々は今からその部屋の隣部屋で待機します。そして、ブライスからの合図があったらキャサリン嬢の部屋へ突入します。


こちらは大丈夫だと思うのですが、心配なのはキャサリン嬢の母親ですね。侍女を使ってリリー嬢を亡き者にしようと企んだくらいです。まだなにか仕掛けてくるかもしれませんので、こちらには王宮の騎士を五名配置しています」


「わかった。それでは移動しよう」


 皆は、その言葉で一斉に立ち上がった。



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