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5 私にできること


 ルーベルトは、あれからすぐにルイーズのお願いに対して了承の返事をくれた。

 父親との話が終わり部屋に戻ったルイーズは、ベッドに腰掛けて、先ほど起きたことを一人で静かに考えていた。


 婚約が解消から白紙になったこと。父親が自分の希望を聞き入れてくれたこと。今日は濃厚な一日だったと振り返りながら、オスカーの様子を思い出す。


 オスカーが急変した様子は明らかにおかしかった。明確な原因があるのか、いくつかの要因が重なったものなのか、現時点では全くわからない。この段階で、自分がどうこうできるものではない。何かわかったとしても、婚約を白紙にするルイーズが首を突っ込んでいい話ではない。


 結局は、父親が男爵に話していた通り、しばらく様子をみることしかできないと、ルイーズは思考を手放した。



 腰掛けていたベッドから立ち上がると、机に向かって歩き出す。椅子を引いてそこに座ると、使い慣れた机の引き出しを開けて日記を取り出した。幼少の頃から続けている一言日記だ。

今日は一言では終わりそうにないと思いながら、続きのページを開くと、物事が起こった順に書き記していく。その横には結果や感想を一言添えて。



エリーと行った庭園でオスカーと女の子を見かけた 。とても驚いた。


エリーが淑女科から侍女科に転科することを聞いた。すごく寂しい。


オスカーから婚約解消の申し出があった(結果的には婚約白紙)ほっとした。


お父様にしばらくの間は婚約を望んでいないこと、考える時間が欲しいことを伝えた。どちらも了承してもらえた。



 今日は思いもよらない出来事が次々に起こり、ルイーズは戸惑っていた。立ち尽くす自分には、周囲の風景が急速に変わっていくように感じられた。

 日記を閉じて引き出しへしまうと、一緒に置いてあった予備のノートを取り出した。一冊のノートを用意して、表紙には「L」の文字を書く。日記ではなく、自分と向き合うためのノート、Lノートだ。

 エリーの決意に触発されて、ルイーズもこれからのことを真剣に考えてみることにしたようだ。


 まずは自分自身について書いているようだ。


ルイーズ・ブラン ブラン子爵家 長女 16歳


カルディニア王国 出身

カルディニア王国女学院1年淑女科


髪色:ダークブラウン 髪の長さ:腰までのロングヘアー

瞳の色:グリーンアイ


(家族)

父 ルーベルト・ブラン 42歳

母 エイミー・ブラン 38歳

弟 リアム・ブラン 8歳

妹 ミシェル・ブラン 3歳


大切なもの:家族・家族同然の使用人のみんな・友人

好きなもの:植物(特にお花)・園芸・お菓子

嫌いなもの:特になし

得意なこと:料理(特にお菓子作り)



書き出した内容を読み返すルイーズ。


(これ以上は……、なにもないかな)


——侍女科のカリキュラムは家庭的なこと全般を学ぶ授業が多い

——もしルイーズが一緒だったら


 ノートの端にエリーから言われた言葉を綴っているようだ。きっと、カフェでエリーから言われたことを思い出しているのだろう。


 エリーは何気なく言ったことかもしれないが、気持ちが落ちていたルイーズにとっては、嬉しい言葉だった。


「私にできることって……、何だろう」


 考えに煮詰まっていると、ルイーズの部屋をノックする音と共に、可愛い声が聞こえてきた。


「姉上」「ねえたまっ!」


 ルイーズはその声を聞くだけで、頬が緩み口角が上がる。

 愛する弟と妹の声だ。


「どうぞ! 入って良いわよ!」


 普段は帰宅そうそう弟と妹の部屋に向かうのだが、今日は男爵とオスカーに対応していたために、二人には会えていなかった。


 思考の沼に嵌まっていたルイーズは、考えることを一旦止め、部屋に入ってきた二人に笑顔を見せた。





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